2022年2月8日 / 最終更新日時 : 2023年4月6日 戎崎 俊一 新型コロナ感染症 SARS-CoV-2ウィルスのRNA修飾が宿主細胞の免疫反応を抑制している Li et al. (2021)によると、SARS-CoV-2ウィルスのゲノムは、RNA3’末端領域が強くN6-methylation of Adenosine (m6A)修飾を受けており、これによってウィルス感染による宿主細胞の免疫反応を回避している。彼らは、宿主細胞のm6Aメチル基転移酵素であるMETLL3を減少させると、SARS-CoV-2ウィルスのRNAのm6A修飾が減少し、RIG-Iタンパク分子のRNA分子への結合が増加し、その下流の免疫回路と炎症反応遺伝子の発現を活発化させることを見出し…
2021年11月18日 / 最終更新日時 : 2023年4月6日 戎崎 俊一 新型コロナ感染症 暖房の活発化によるコロナ感染症拡大を防げ これから寒くなるにつれて暖房が活発化し、日本でもコロナ感染が再び広がる懸念があります。暖房で相対湿度が下がると、口鼻からの唾液滴が乾燥が急速に水分を失うため、一部のウィルスが活性を維持したまま、空気中に滞留し、感染につながる可能性があります。このような「空気感染」に対する対策は以下の4つが考えられます。1)換気する。2)常時マスクを着用する。3)室内の相対湿度を50%以上に保つ。4)空気清浄機でウィルスを不活性化する。私の部屋で実験していますが、電気屋さんで買えるような加湿器では、部屋の湿度数%以上…
2021年10月20日 / 最終更新日時 : 2023年4月6日 戎崎 俊一 新型コロナ感染症 ウィルスと相対湿度:この冬をどう過ごすか 呼吸器疾患を起こす病原体(細菌やウィルス)の活性維持能力(viability)は、環境の相対湿度に強く依存します。上図は横軸に相対湿度、縦軸に活性維持能力を取った模式的な図です。細菌は、相対湿度が下がるにつれて、活性維持能力が落ちてきますが、ウィルスは、相対湿度が50-80%のところに活性維持能力の極小があり、そこから相対湿度が増えても、減っても活性維持能力が増加することが知られています。ただし、ウィルスによってその特性曲線の形かなり違うらしいことがわかっています。呼吸系疾患の病原体は、感染者の口か…
2021年10月18日 / 最終更新日時 : 2023年4月6日 戎崎 俊一 新型コロナ感染症 布マスクの感染防止能力 理研の同僚の和田智之さんのチームのすばらしい研究成果を報告します。彼らはレーザーを使ってマスクを透過するマイクロ飛沫の数を測定しました。その結果、ウレタンマスクは、マスクなしの場合とほとんど変わらない場合がある一方で、不織布マスク、布マスクはサージカルマスク(N95やKF94)とほぼ同等のフィルター性能を持つ(ほとんど飛沫が透過しない)ことが確認されました。水分を多く含んだ飛沫のフィルター性能には、マスク素材の吸湿性が大きな影響を与えるということでしょう。冷感素材は、一般に吸湿性が低いものが多いので…
2021年10月18日 / 最終更新日時 : 2023年4月6日 戎崎 俊一 新型コロナ感染症 デルタ株の感染とエアコン 日本では9月に入りデルタ株の割合が減少しました(左)。その理由に関しては、専門家も頭をひねっているようです。その議論をしていた時に、和田さんが、「もしかしたらエアコンの稼働と関係があるかもしれない」と言い始めました。そこで、戎崎は東京の2021年の5月-9月の気温の変化を調べてみました(右:気象庁の公開データ)。2021年の6月上旬にセ氏30度を超える真夏日が始まりました。このころ、エアコンの冷房を入れ始めたと思います。その後一旦、最高気温が30度を切るようになります。関東の梅雨入りが6月14日ごろ…
2021年3月1日 / 最終更新日時 : 2023年4月6日 戎崎 俊一 新型コロナ感染症 新型コロナ、再拡大を警戒 総合力で複数手段を用意し「完封」を 日本においては、新型コロナウイルス感染の第3波が峠を越えた。ワクチン接種も開始された。ただし、国民の大部分が接種を終わるまでまだ少なくとも半年はかかりそうだ。2021年度前半は、通常の手法で感染の再拡大を防ぎつつ経済活動を速やかに復旧させることが重要課題である。 まず、無症状のままウイルスの排出がはじまることが多い新型コロナ感染症の特異な性質に注意しよう。したがって、健康に異常がなくてもマスクの着用と頻繁な手洗いを継続しよう。特にマスクが重要だ。保因者の口や鼻から飛散するウイルスを含んだ唾液や鼻汁の…
2020年12月6日 / 最終更新日時 : 2023年4月6日 戎崎 俊一 新型コロナ感染症 紫外線によるSARS-CoV-2ウィルスの不活性化 ファイル 304-1.pdf2020年9月3日アクセレレーション技術発表討論会における戎崎の講演資料。