アメリカ合衆国連邦議会下院コロナウィルス感染爆発特別小委員会の事後評価報告:コロナウィルス感染爆発の起源

アメリカ合衆国連邦議会下院に設けられたコロナウィルス感染爆発事後評価特別小委員会が2024年12月4日に最終報告書を以下のURLで公開した。

https://oversight.house.gov/wp-content/uploads/2024/12/2024.12.04-SSCP-FINAL-REPORT-ANS.pdf

コロナウィルス感染爆発に関する重要な知見を含んでいるので、ここにコロナウィルス感染爆発の起源に関する部分(p1-5)を翻訳することにした。私は天文学者であり政治家が書く文章には慣れていないので、翻訳されたニュアンスが原文とは違う可能性がある。気になることがあれば、原文で確認していただきたい。

翻訳はここから


コロナウィルス感染爆発の起源、機能獲得研究の連邦政府資金の関与とその他の事項

1. COVID-19の不明な起源
発見:SARS-CoV-2、COVID-19の原因であるウィルスは、実験室もしくは研究に関係した事故のために発生した可能性が高い。

この百年で最悪の感染爆発の開始から4年が経った証拠の蓄積は研究室事故漏洩説をより強く支持している。特別小委員会はその仕事を2023年2月に開始し、より多くの上級情報担当者、政治家、科学編集者、そして科学者は、COVID-19が実験室もしくは研究関係の事故の結果出現したとする説を裏書きしている1

2021年1月、国務省は秘密扱いされていない概要書(fact sheet)「概要書:武漢ウィルス研究所の活動」(以後「概要書」と呼ぶ)を出版した。そこには以下のような記述がある。

1) 武漢ウィルス研究所(以下WIV)内部の数人の研究者が、2019年の秋の感染爆発の最初の同定症例の前に、COVID-19と一般の季節性疾患と一致していた症状の病気になったと信ずるに足る理由を、アメリカ合衆国政府は持っている2。2023年6月アメリカ合衆国国家情報長官室(ONDI)が提出した「武漢ウィルス研究所とCOVID-19感染爆発の起源の潜在的なつながり」と題された評価書(以後「2023年6月ONDI評価書」と呼ぶ)がこの結論を支持している3
2) 「武漢ウィルス研究所はキメラウィルスを作出する機能獲得研究を実行しているという記録を出版している」4。2023年6月ONDI評価書は、この結論を支持し、さらに進んで「WIVの科学者たちはキメラ、言い換えるとSARSに類似したコロナウイルスの組み合わせを遺伝子工学によって作成し、他の無関係なウイルスのクローンを作成しようとし、そして逆遺伝子クローン技術をSARSに類似したコロナウイルスに用いた。5」と述べている。2023年6月ONDI評価書は、さらに「WIVのコロナウィルスに関する遺伝子工学プロジェクトは、意図的な変化を検出困難にする技術を含んでいた」と続けている6
3) WIVは自分自身は民間研究所としているが、少なくとも2017年からWIVが出版と秘密プロジェクトで中共軍と協力していると合衆国は認定している7。2023年6月ONDI評価書は、「WIVの職員は、人民解放軍(PLA)所属の科学者と健康に関するプロジェクトに関して協力しており、生物安全と生物テロリズム対策プロジェクトについて共同研究している」とこの結論を再び支持している8

さらに、2023年6月ONDI評価書は、「WIVの何人かの研究者は、少なくとも感染爆発前はSARS様コロナウィルスを取り扱うにあたって、適切な生物安全予防を取っていなかった。このことは、ウィルスへの意図しない曝露の危険を増加させた」と言っている9

2023年2月と3月に、DOEとFBIは、それぞれの評価書でCOVID-19は実験事故の結果生じたと思われると公に認めた、FBIは中程度の確度、DOEは低い確度で10。他の情報機関は、COVID-19は人獣共通感染症起源であると思われるとしている。ただしその確度は低い11

2023年3月8日、レッドフィールド博士は以下のように証言している。

レッドフィールド博士(2023年3月8日)
感染爆発の最初の日々から、私はCOVID-19の起源に関する二つの説は積極的かつ徹底的に調べる必要があると思ってきた。私の初期のデータ解析に基づき、私はそれはCOVID-19感染が、自然における流出よりも、実験室からの意図しない漏れの結果である方がもっともらしいことを示していると信じるようになったし、今もそう信じている。この結論は、基本的にはウィルスそのものの生物学的な特徴に依拠している。それには、新しい変異の急速な進化の原因となるヒトからヒトへの迅速で高い感染性が含まれる。また、2019年の秋に武漢およびその周辺で起こった異常な複数の活動を含む重要な他の要因も根拠となっている12

1か月後の2023年4月には、ラクリフェ氏が以下のように証言している。

まず第一に、結論について最初に話させて欲しい。感染爆発の最初の年の間、政府の機密情報に誰よりもアクセスできた者としての私の情報に基づいた評価は、実験室からの漏洩こそが、私の機密情報、科学、そして常識から信頼度高く支持される唯一の説であるということだった。それは今も変わらない。ICの内部の見方からは、もし実験室漏洩論を支持する私たちの機密情報と証拠と自然起源もしくは流出論を示す機密情報と証拠を並べておいたならば、実験室漏洩説の側は長く説得的で、圧倒的でさえあるのに対し、自然流出説の側はほとんど空虚で薄い13

2024年1月にウェイデ氏は、実験事故起源説をより強く支持すると表明した14。ウェイデ氏は「SARS2はフリン切断部位を持っているが、そのウィルス族の他の871種の既知のウィルス種のどれもそれを持っていない。したがって、そのウィルス族の遺伝物質の普通の進化的交換ではこのような部位を獲得することができない15」。ウェイデ氏はさらに、自然には存在しないフリン切断部位について、EcoHealth とWIVのDEFUSE提案書(DARPAによって拒否された)では、自然では発生しなかったこと、すなわち「SRAS2ウィルスにフリン切断部位の挿入」が試みられていた16と指摘した。したがって、COVID-19がコスト的に有利だが危険の高いBSL-2手順でこの研究を実行する準備をしていた研究室がある都市で出現したことは、単なる偶然ではない17

2024年6月に、チャン博士は、実験室漏洩説が人獣共通感染症起源よりももっともらしいと支持する5つの鍵となる点を説明している18

まず最初に、COVID-19は武漢で出現した。その都市は中国で最初のSARS様ウィルスの研究所があった場所だった19。シー博士はSARS様ウィルスの研究を数十年行ってきたが、彼は、最初から感染爆発はWIVから始まったものではないかと疑っていた20

次に、2018年、感染爆発が始まる1年前に、EcoHealthはWIVと共同でDARPAへの補助金申請をした。それはSARS-CoVの特徴をもつウィルスを作出することを提案するものだった。彼らのDARPAへの申請書に、EcoHealthとWIVの仲間は、フリン切断部位を持ったSARS様ウィルスを作出すると書いていた。これは、COVID-19を人間に感染できるようにしたまさにその性質である21

三番目に、WIVはこの種の空気感染性のウィルス研究を低い生物学安全性の条件下で行っていた記録を残している22。WIVにおいては、中国人の研究者がこの種の研究を、マスクを必ずしもすべての時間で要求しないBSL-2手順で行っており、感染防止能力の低い機器を用いていたことが知られていた23。アメリカ合衆国ではこの種の研究は、すべての時間でより厳密な人工呼吸器もしくはより防御の強い装置を要求する、BSL-3手順のもとで行われる24。事実、DARPAへの補助金申請書の原稿で、ダスザック博士はWIVではSARS-CoV-2研究が一部がBSL-2手順で行われていることを認識していた25

四番目にCOVID-19が武漢にある武漢海産物市場の動物から来たとする説を支持する根拠は希薄である26。チャン博士は、「既存の遺伝子と感染爆発初期の症例のデータは、すべての既知のCOVID-19の症例がSARS-CoV-2ウィルスのヒトへの単一の導入から始まったらしいこと、そして、武漢の市場の感染爆発は、ウィルスがヒトに既に感染を繰り返した後に起こった可能性が高いことを示している」と指摘した27。その上、武漢市場とその供給鎖のどこでも、感染された動物は確認されていない28

最後に、もしウィルスが野生生物取引から発生したのなら期待される証拠がまだ見つかっていない29。2002年のSARSや2012年のMERSのようなこれまでの感染爆発では、感染した動物が発見され、最初の症例は生きた動物に暴露した人々で起こり、祖先的な変異を持ったウィルスが動物に発見されている。しかし、COVID-19の場合はこのような証拠が全くない30

2024年9月にボリス・ジョンソン前イギリス首相は、COVID-19感染爆発は武漢の実験室か研究に関係した事故を通して始まったとの彼の信念を述べた31。ジョンソン氏は感染爆発は「変異は中国の研究室での不細工な実験のせいであるということは圧倒的にもっともらしい」32

2024年11月、バイデン・ハリス政権のもとでCOVID-19対応調整官を務めたアシシュ・K・ユハ博士は、「中国の上級軍人は攻撃的な生物兵器の潜在的有効性について長年主張してきた33」彼は、COVID-19ウィルスが、実験室から非意図的に漏れたかもしれないと認識していた34

2024年11月21日連合王国の感染爆発対策に大きな役割を果たしてきたキングス・カレッジ・ロンドン教授のティム・スペクター博士は、研究室漏洩はもっともあり得そうな感染爆発の起源であるとの彼の信念を述べた35。スペクター博士は、「多少の隠ぺい工作があった可能性が高くなっており、最も可能性が高い原因は武漢から研究室漏洩である」と指摘した36

感染爆発の中で、COVID-19の起源が人獣共通感染症で動物からヒトに感染されたということを示唆する研究がいくつかある37。リプキン博士はこれらの二つの研究のどちらも「机上の空論の疫学」であると述べ38、バリック博士はその一つに「重大な問題がある」と述べ39、科学誌Scienceの編集長であるホルデン・ソープ博士(二つの研究のうち一つの出版社)は、「自然起源説を決定的に証明しているわけではない」と証言した40

ラトクリフ氏が証言したように、実験室漏洩説は説得力のある証拠に満ちており、一方で、異種間伝播の証拠はほとんど空虚である。2020年1月以来、実験室漏洩説を支持する証拠だけが増えている。

1) Throught this Report, “COVID-19” is used to describe SARS-CoV-2.
2) FACT SHEET: ACTIVITY AT THE WUHAN INSTITUTE OF VIROLOGY, U.S. DEP’T OF STATE (Jan. 15, 2021) [hereinafter “Fact Sheet”].
3) POTENTIAL LINKS BETWEEN THE WUHAN INSTITUTE OF VIROLOGY AND THE ORIGIN OF THE COVID-19 PANDEMIC, OFFICE OF THE DIR. OF NAT’L INTELLIGENCE (June 2023) [hereinafter “June 2023 ODNI Assessment”].
4) Fact Sheet, supra note 2.
5) June 2023 ODNI Assessment, supra note 3.
6) Id.
7) Fact Sheet, supra note 2.
8) June 2023 ODNI Assessment, supra note 3.
9) Id.
10) Hannah Rabinowitz, FBI Director Wray acknowledges bureau assessment that Covid-19 likely resulted from lab incident, CNN (updated Mar. 1, 2023); Jeremy Herb & Natasha Bertrand, US Energy Department assesses Covid-19 likely resulted from lab leak, furthering US intel divide over virus origin, CNN (Feb. 27, 2023).
11) June 2023 ODNI Assessment, supra note 3.
12) Investigating the Origins of COVID: Hearing Before the Select Subcomm. on the Coronavirus Pandemic, 118th Cong, 1, (Mar. 8, 2023) [hereinafter “Investigating the Origins of COVID-19”].
13) Investigating the Origins of COVID Part 2: China and the Available Intelligence: Hearing Before the Select Subcomm. on the Coronavirus Pandemic, 118th Cong, 1, (Apr. 18, 2023) [hereinafter “Investigating the Origins of COVID Part 2: China and the Available Intelligence”].
14) Nicholas Wade, The Story of the Decade, CITY JOURNAL (Jan. 25, 2024).
15) Id.
16) Id.
17) Id.
18) Alina Chan, Why the Pandemic Probably Started in a Lab, in 5 Key Points, THE N.Y. TIMES (June 3, 2024)[hereinafter “Chan”].
19) Id.
20) Id.
21) Id.
22) Id.
23) Id.
24) Id.
25) Emily Kopp, American scientists misled Pentagon on research at the Wuhan Institute of Virology, U.S. RIGHT TO KNOW (Dec. 18, 2023).
26) Chan, supra note 18.
27) Id.
28) Id.
29) Id.
30) Id.
31) Jane Dalton, Boris Johnson claims Covid originated in lab, in sudden U-turn in his views, INDEPENDENT (Sept. 29, 2024).
32) Id.
33) Ashish K. Jha, et al., The U.S. could soon face a threat ‘more powerful’ than nuclear weapons, THE WASH. POST (Nov. 11, 2024).
34) Id.
35) Sarah Knapton, Lab leak most likely source of Covid, says Prof Tim Spector, THE TELEGRAPH (Nov. 21, 2024).
36) Id.
37) Alexander Crits-Christoph, et. al., Genetic tracing of market wildlife and viruses at the epicenter of the COVID-19 pandemic, CELL 187: 5468-5482; Edward Holmes, et. al., The origins of SARS-CoV-2: A critical review, CELL 184: 4848-4856; Jonthan Pekar, et. al., The molecular epidemiology of multiple zoonotic origins of SARS-CoV-2, SCIENCE 377:960-966; Michael Worobey, et. al., The Hunan Seafood Wholesale Market in Wuhan was the early epicenter of the COVID1-9 pandemic, SCIENCE 377: 951-959; Edward Holmes, et. al., The emergence and evolution of SARSCoV-2, ANN. REV. VIROL. (Sept. 11, 2024).
38) Transcribed Interview of Ian Lipkin, M.D., John Snow Professor of Epidemiology, Columbia Univ. (Apr. 6, 2023)[hereinafter “Lipkin TI”].
39) Transcribed Interview of Ralph Baric, Ph.D., Professor, University of N. Carolina, at 102 (Jan. 22, 2024)[hereinafter “Baric TI”].
40) Academic Malpractice: Examining the Relationship Between Scientific Journals, the Government, and Peer Review: Hearing Before the Select Subcomm. on the Coronavirus Pandemic, 118th Cong, (Apr. 11, 202) (Statement of Dr. Holden Thorp, Editor-in-Chief, Science Journals).

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