布マスクの感染防止能力

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理研の同僚の和田智之さんのチームのすばらしい研究成果を報告します。

彼らはレーザーを使ってマスクを透過するマイクロ飛沫の数を測定しました。その結果、ウレタンマスクは、マスクなしの場合とほとんど変わらない場合がある一方で、不織布マスク、布マスクはサージカルマスク(N95やKF94)とほぼ同等のフィルター性能を持つ(ほとんど飛沫が透過しない)ことが確認されました。水分を多く含んだ飛沫のフィルター性能には、マスク素材の吸湿性が大きな影響を与えるということでしょう。冷感素材は、一般に吸湿性が低いものが多いので注意が必要です。

別途、富岳を使ったコンピュータシミュレーションで、布マスクのフィルター性能が、不織布マスクに対してかなり劣るとの結果が発表されてマスコミ等で流布されております。ただし、この差はコンピュータシミュレーションで用いた飛沫の布地への付着確率の値が不適当であったためと思われます。今回の和田さんらの研究結果を踏まえると、上記のシミュレーション結果は再検討が必要であることが明らかになりました。

このデータを見ると、日本人の感染率が低い理由(ファクターX)は、布マスク、不織布マスクを外出の際は律儀に装着してきたことであるように思われます。アジアの他の国でファクターXが比較的顕著ではないのは、ウレタンマスク装着の割合が高いせいかもしれません(誰かデータ持っていたら教えてください)。

振り返ると、アベノマスク配布事業は誠に的を射た政策でした。あのおかげで、国民全員に「マスクをしろ」という政府のメッセージが浸透しました。また、不織布マスクの品薄も解消し、国民のほとんどがマスクを装着し続けられる環境を醸成しました。