熱感受性ポリマーを使ったナノモーターのシミュレーション:Numerical simulations of Nanomotors made of thermosensitve polymers

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バブルモーターは非対称ブラウンラチェットモデルの一つで、レールと運動子からできている。両者は、ランダムブラウン運動状態と非対称ポテンシャル状態の二つの結合状態を持つ。レールには左右非対称の疎水性の模様がプリントされている。本研究では、運動子をV字型で熱感受性ポリマーで作ることを提案した。熱感受性ポリマーは微小な温度の変化に反応して、その表面が疎水性/親水性遷移を起こす。温度を瞬間的にあげると、運動子が親水性になってランダムブラウン運動状態になる。拡散で温度が下がると運動子が疎水性に戻る。この時、運動子とレールの間に挟まれた微小空間では、疎水性のために水分子が排斥されて、バブル(真空)が発生し、両者が強く結合する。この時、非対称なポテンシャルが形成されて、両者の疎水性の重なりが最大になるように運動子が運動する。これを繰り返すことにより、運動子はほぼ一方向に駆動される。数値シミュレーションの結果は、この新しいナノモーターが実際に高効率(60%ぐらいで生体の筋肉なみ)で働くこと、また、その動きが生体内に働くキネシンなどのモーターたんぱく質のそれと大変良く似ていることが分かった。バブルモーターは、非常に高高率であるだけでなく、生体の中で働く分子モーターの機構解明にも役立つことが分かった。

Arai, N. et al. 2013 JACS