降着超大質量ブラックホールにおけるZeV(10^21 eV)加速

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図1:降着円盤で励起された強力なアルフベン波がジェットを伝搬するうちに航跡場を作る。その中で荷電粒子がジェットに平行に加速される。

図2:灰色の領域で10^20 eVを超える加速が起きる。

宇宙からやってくる高エネルギー粒子、宇宙線のスペクトルは、10^20 eVを超えるエネルギーまで滑らかに冪級数的に伸びている。このような極限的なエネルギーにまで荷電粒子を加速するには、これまでのフェルミ加速機構を超える効率の良い加速機構が必要だとされてきた。

Ebisuzaki and Tajima 2013は、ブラックホール周りの降着円盤で作られるアルフベン波の強力なパルスが、降着円盤から垂直に吹き出すジェットに沿って伝搬する間に、航跡場を励起し、その電場で粒子が加速されるという新しい加速理論を提案した。この場合、加速電場は、進行方向(ジェットに平行)にかかるので、粒子を曲げなくてもよく、放射損失を最小にとどめることができる。また、アルフベン波、航跡場、そして粒子がすべて同じ光速でジェット内を走ると期待される。したがって、一度、加速位相に入ってしまえば、長い距離その位相関係を保つことが可能になる。実際、数十光年をこえる長距離にわたって、波に乗るサーファーの様に粒子が加速される。

この加速機構のもう一つの特徴は、電子も陽子と同様に加速されることである。電子の加速に使われたエネルギーは、最終的にはガンマ線光子として電子から放射される。したがって、このような航跡場加速天体は、GeV-TeV領域のガンマ線の線源でもあるはずである。実際、ガンマ線天文衛星フェルミは、GeV-100GeVガンマ線を放射する活動的銀河核を多数発見している。そのうち50Mpc内の近傍のものが、極限エネルギー宇宙線の線源の有力候補と考えられる。

強力なレーザーで、航跡場を作って加速するレーザー航跡場加速は、磁場で曲げながら加速する現在の人口加速器の限界を超える加速器の原理として注目を集めている。アルフベン波かレーザーかの違いがあるものの、同様の機構で粒子を10^21 eVまでの加速する航跡場加速天体が本当に宇宙にあることが分かれば、レーザー加速器も原理的には可能なことを示している。これは、地上のレーザー航跡場人口加速器の開発を強く後押しする結果であると言える。

Ebisuzaki, T. and Tajima, T. 2013, http://arxiv.org/abs/1306.0970