李永春家屋
群山に今も残る日本人家屋を見せてもらいました。その一つが、李永春家屋です。ここは、熊本農場を創立して運営した熊本利平氏が1920年に立てた別荘です(写真1)。
http://www.seoulnavi.com/miru/2010/
李永春家屋では、市役所を退職後、ボランティアでこの家屋の案内をしている。Chang-Yoo Leeさんに話を聞くことができました。李博士は熊本氏の援助で、京大に入学し、医学博士を取得しました。韓国で最初の医学博士だったそうです。帰韓後は熊本農場の従業員、小作人の診療に当たりました。彼が診療に使った薬品なども熊本氏が支出したそうです。李博士と熊本氏は深いきずなで結ばれていたようで、李博士の夢である農村衛生研究所の設立へも援助する約束をしていたようです。しかし、その実現を待たずに終戦を迎え、熊本氏は農地を小作人に与え、この屋敷を李博士に託して帰日したそうです。その後、李博士はこの屋敷に住み、多くの苦労をして農村研究所を設立し、韓国のシュバイツアーと呼ばれるようになりました。李永春家屋は彼が設立した看護学校と病院の一角にあります。
母の記憶によると、当時の韓国の貧しい方たちは、炊事、洗濯、そして排せつ物の処理まで同じ川でしていて、子供ながらにとても不衛生に見えたとのことです。もちろん今の韓国では全くそういうことはありません。農村における衛生観念の確立こそ、李永春博士とその後援者だった熊本利平氏が語り合った夢だったのではなかったでしょうか?
この屋敷は和洋折衷の洋館で内部にはオンドルを配しており、夏涼しく、冬は暖かくとても住みやすそうな家でした。韓国最大の地主となった熊本氏が凝りに凝って家具やシャンデリアを運ばせて建てたものだそうです。建築費は、朝鮮総督府と同じくらいだったそうです。実際に訪れてみると、意外と小さな建物でした。数人の家族と従業員が住んでいたと思われます。
熊本農場の資材帳は、看護学校に保存されていたそうです。今は市が保管しているようです。どのような経営がなされていたかに関する詳細な研究を、日韓合同のチームを組織して、行っていただけないかと思います。
むしろ、私は和洋韓の良いところを合わせて破綻しない建築の素晴らしさに感心しました。そこに熊本氏のと質実剛健の生活、創意と進取の気性を私は見てとりました。群山に観光なさる日本人はぜひ誇りを持ってこの屋敷を見学してほしいと思います。