自然の原子炉が臨界に達する条件
自然環境下で核分裂連鎖反応が臨界になるためには、以下の条件が必要である(Gauthier-Lafaye et al. 1996)。
1)臨界質量を超えるほどウランの濃度が高いこと
2)ホウ素や希土類元素などの中性子捕獲原子核の存在比が小さいこと
3)中性子の減速材として働く、軽元素(水の水素)が豊富にあること
4)ウラン鉱物が核分裂可能核を多く含んでいること
最後の条件は、ウラン鉱物の年齢と関係している。核分裂をしない238Uの半減期(44.68億年)は、核分裂を起こす235Uの半減期(7.038億年)よりも6倍長いので、オクロの自然原子炉が活動した20億年前の地球では、235Uの濃度が3.7%と現在の0.725%に比べて5倍高かった。地球が生まれた46億年前に遡ると25%まで増加する。これが、オクロよりずっと品位の高いが若い鉱床で自然原子炉現象が見られない原因である。逆に、生命が誕生したと考えられている冥王代(46-40億年前)の地球では、自然原子炉がたくさんあった可能性が高い。
Gauthieir-Lafaye, F. 1996, Natural fission reactors in the Franceville basin, Gabon: A review of the conditions and results of “critical events” in a geologic system, Geochimica Cosmochimica Acta, 60, 4831-4852.