独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書 ジーン・シャープ著

独裁政体制から非暴力的に政権を取り返すためのノウハウが書かれている。この本を参考に多くの独裁国家の民主化が成し遂げられたという。「仲間を作る」「会合を開く」「意識の高いコア集団を組織する」「プロパガンダ文書を印刷して広く配る」「海外と連携する」「デモンストレーションを企画する」とここまで読んでふと気が付いた。私が今やっていることとあまり違いはない。

科学革命、つまり新しい科学のパラダイムを考え出して、科学界に広く認めさせることの具体的手段は、政治的革命のそれと似ているのは必然的であろう。命の危険は多くの場合はないが、職を失う(得られない)危険は常にある。若い研究者が老獪な科学政治屋教授に肩をたたかれて、「そんなことやっていたら、ポストなんかないぞ」というような類の「忠告」を受けるのはよく聞くこと。そういう忠告や中傷に近い批判をかいくぐりつつ、仲間を増やし、体制派とうまく付き合い、海外と連携しつつ勢力を拡大して目標を達成する。

「忠告」で主張を変えてしまうビビり屋は、むしろ体制側にも相手にされずに捨て去られるだけだ。科学者の仕事は何らかの意味で「科学革命」を成し遂げることにある。新しい主張を言い始めることは、怖い。孤独の中で自分の正しさを確認し、実行する精神的強さを持たねばならない。