映画評 Inglourious Basterds 2009

クエンティン・タランティーノ監督の戦争映画である。タランティーノ監督作品の通例で、映画は一見独立した五つのストーリーで構成されている。最初の数話は相互の関係がわからない。タランティーノなんだからきっとこのストーリーは後で伏線として生きてくるに違いない信じて、我慢して見続ける忍耐力が必要である。主演はブラッド・ピットだが、彼の南部訛りの英語が聞き取りづらく、筋を追うのに苦労した。

さて、最終話ですべての伏線がクライマックスに統合される。ナチス宣伝映画のこけら落としに集まった、ヒットラーを始めとするナチス高官が映画館に閉じ込められて焼死する(もちろん、史実とは違う)。銀幕裏に集められたニトロセルロース製の映画フィルムに火が点けられると、ナチスに両親を殺されたショシャナの上半身が画面に大写しになる。その映像が、漂う煙の散乱で画面から抜け出して戸惑うナチス高官に覆いかぶさるように出てくる。実に怖い。背筋が戦慄した。このシーンは映画史上に残る傑作に数えられることになると思う。

多分、蜘蛛の巣のように張り巡らされた伏線のほんの一部しか私はわかっていないと思う。字幕の助けを借りてもう一度ゆっくり映画館で見たい映画だが、クライマックスにシーンはますます怖いだろうね。