情報理論 甘利俊一著

情報理論の基礎を扱った好著。第一章で、あまりにすらすらと情報エントロピーが導き出されるのは驚きだった。その後の章で、通信に関する情報理論が展開され、著者の代表的仕事とされる情報幾何学のとば口まで導かれる。講義録を起こしたものらしく、著者独特の語り口が残っていて名教授の名講義を聞いている気分が味わえる。各説の最後に置いてある「雑談」は、情報学の考え方や方法論を著者なりの解釈で伝えるもので、大変参考になった。

このところ、生物進化の理論を作っている。繁殖は交配を通じた次世代へのゲノムの通信とみなせるかもしれない。本書では、通信の結果ノイズが乗って情報はどんどん失われて一方である。ところが、生物進化においては、幾世代にもわたって情報が保たれ、自然選択を通じて情報が新しく生まれているようにも見える。生物進化を情報理論をつかって論じてみるのも面白いかもしれないと思った。すでにあるかもしれないが。