新潟・神戸歪集中帯は、山形県庄内地方南部近海から、新潟県、長野県北部、滋賀県を経て神戸に延びる幅約200キロメートルの歪みが集中する領域である（Figure 1; eg. Iio et al. 2002）。

新潟・神戸構造体が紫色で表示されている。活火山が黒の三角オレンジ色の星印がマグニチュード6.5以上（h<20km）の地震の震央である（1993‐2015）。灰色の線は活断層、緑色の破線が糸魚川・静岡構造線を表している。

新潟・神戸歪集中帯の地殻下部には大量の流体が存在していており、その結果地殻が弱化するためにこの地帯に歪みが集中しやすいことが指摘されている（Iio et al. 2002）。

新潟・神戸構造帯が紫色で表示されている。活火山が黒の三角オレンジ色の星印が1993年から2015年の間に起きたマグニチュード6.5以上（深さ<20km）の地震の震央である。灰色の線は活断層、緑色の破線が糸魚川・静岡構造線を表している。新潟・神戸構造帯の付近に活断層が集中していることが分かる（Nakajima and Matsuzaka 2017）。

日本列島の地下には、東から太平洋プレートが、南からフィリッピン海プレートの両方が沈み込んでいる。このため、太平洋プレートの上にフィリピン海プレートが存在する複雑な構造をしている（Figure 2a）。フィリピン海プレートはその下の太平洋プレートの中での含水鉱物の脱水反応で生じた流体（マグマ水）のために弱化している。さらに、その東の角で太平洋プレートに接触したために、引き裂かれている（Figure 2b）。その裂け目が、北陸から若狭湾・琵琶湖にかけての地下に存在している（Miyazaki et al. 2023）。このフィリピン海プレートにできた裂け目のせい（Figure 2c）で、太平洋プレートを構成する含水鉱物の脱水作用で発生した水（流体）が地殻下部に直接届くために新潟から神戸にかけての領域に、歪みが集中すると考えられる。

能登半島北部で2018年から2023年まで発生した群発地震、そして2024年1月1日能登半島地震は、流体の上昇が原因とされている。この流体の起源は、沈み込むプレートの含水鉱物の脱水反応によって発生したものと推定されている（Umeda et al. 2024）。また、神戸の有馬温泉の湯も沈み込むプレート起源とされている（Yamanaka and Adachi 2024）。これらの流体は、新潟・神戸歪集中帯を作った流体と同根であり、フィリッピン海プレートの裂け目は、一部神戸付近まで達していると考えられる。

１）Iio, Y., Sagiya, T., Kobayashi, Y., and Shiozaki, I., 2002, Water-weekend lower crust and its role in the concentrated deformation in the Japanese islands, Earth and Planetart Science Letters, 203, 245-253.

2）Nakajima J. and Matsuzawa T., 2017, Anelastic properties beneth the Niigata-Kobe tectonic zone, Japan, Earth, Planets, and Space. 69, 33.

3) Miyazaki, K., Nakajima, J., Suenaga, N., Yoshioka, S., 2023, Deep subduction of the phillipine sea slab and formation of slab window beneath central Japan, Earth, Planets and Space, 75, 93.

4）Umeda, K., Yamazaki, Y and Sumino, H, 2024, Geochemical Signature of Deep Fluids Triggering Earthquake Swarm in the Noto Peninsula, Central Japan, Geochemical Signature of Deep Fluids Triggering Earthquake Swarm in the Noto Peninsula, Central Japan, Geophysical Research Letters, 51, e2024GL108581.

５）Yamanaka、T. and Adachi I., Hot springs reflect the flooding of slab-derived water as a trigger of earthquakes, 2024. Communications Earth & Enviroment, 5, 459.

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