海綿動物の炭酸カルシウム鉱化:Calcification of Sponge

ファイル 20-1.jpg

海綿動物は古生代中生代の重要な造礁生物であり、骨を作る遺伝子セットを獲得した最初の多細胞生物と考えられている。Jackson et al. 2007は、Astrosclea Willeyana(stromatoporid spongeの生き残り)において、炭酸カルシウム鉱化で働いている酵素を分離してAstrsclerin-1, -2, -3を得た。これらは炭酸カルシウム鉱化の中で重要な働きをしているα-carbonic anhydrase(炭酸脱水素酵素)とよく似た配列を持ち、同じ遺伝子族に属すると考えられる。それらの系統を調べた結果、α-carbonic anhydrase遺伝子族は後生動物(Matazoa)の共通祖先で獲得されて、それが海綿から真後生動物へ至る進化の過程で起こった数回の遺伝子複製を経て炭酸カルシウム生物鉱化の機能を持ったと考えられる。

Jackson et al. 2007, Nature, 316, 1893-1895.

書籍版『科学はひとつ』のご案内

科学はひとつ 宇宙物理学者による知的挑戦の記録
戎崎俊一 著
学而図書/四六判 並製320頁/本体2,400円+税

12年にわたり執筆されてきた記事を精選し、「地震と津波防災」など全9章に再編。すべての章に著者書き下ろしの解説を加えて集成した一冊。