低線量率被爆した父親(チェルノブイリ清掃作業従事者)の子供におけるゲノム不安定の解析

イオン化放射線に対する低線量被ばくした父親(チェルノブイリ事故の清掃労働者)と被ばくしていない母親の間に生まれた、被爆していない子供の、ゲノム不安定を調べた(Aghajanyan et al. 2011)。父親たちの清掃従事時間は2-6か月にわたり、その平均被爆線量は226 mSvだった。異常細胞頻度、染色体型異常頻度、そして染色体切断頻度は、清掃労働者の父親とその子供において、コントロールよりも有意に(2-3倍)高かった。染色体切断頻度(100細胞に4-5個)は、父親の被爆と妊娠の時間とは無関係だった。平均異常染色体頻度は、子供と父親で変わらなかったが、母親とは有意に違っていた。これは、低線量被ばくが父親にゲノム不安定を誘導したこと、さらにそれが子供にもゲノム不安定を誘導したことを示唆している。したがって、ゲノム不安定がこれらの子供の生涯にわたる疾病率の増加に貢献している可能性がある。

1) Aghajanyan, A. et al. 2011, Analysis of Genomic Instability in the Offspring of Fathers Exposed to Low Dose of Ionising Radiation, Enviromental and Molecular Mutagenesis, 52, 538-546.