前生物的ピリミジンリボヌクレオチドの合成:Prebiotic pyrimidine ribonucleotides

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生命の起源のある段階において、情報高分子が純粋に化学的に合成されなければならない。「RNAワールド仮説」においては、それはRNAであるが、その実験的な証明はこれまで成功していない。特に、「活性化」されたリボヌクレオチドからRNAを合成できるものの、どうやってリボヌクレオチドが、その構成要素であるリボースと核酸塩基から作られたか全くわからない。まず、リボースを選択的に作ることが難しい、さらに核酸塩基にリボースを付け加えるプリンの場合でも困難で、普通のピリミジンではまったく起こらない。
Powner et al. (2009)は、活性化したピリミジンリボヌクレオチド(1)が、単体のリボース(4)も単体の核酸塩基(3)も経ずに、arabinose amino-oxazolineとanhydronucleside(13)を経由する短い経路で合成できることを示した。この合成経路の出発物質は、シアナミド(8)、シアノアセチレン(7)、グリコールアルデヒド(10)、グリセルアルデヒド(9)、そして無機燐酸である。反応条件は想定される原初地球の地球化学的にモデルに整合的である。無機燐酸は反応経路の最後でのみ取り込まれるが、その存在は初期の三つの反応において酸/塩基触媒として、求核性触媒として、そしてpHと化学緩衝材として働くので、反応の最初から必須である。

Powner M.W. et al. 2009, Synthesis of activated pyrimidine ribonucleotides in prebiotically plausible conditions, Nature, 459, 239-242.