2013年6月9日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 天体物理学 降着超大質量ブラックホールにおけるZeV(10^21 eV)加速 図1:降着円盤で励起された強力なアルフベン波がジェットを伝搬するうちに航跡場を作る。その中で荷電粒子がジェットに平行に加速される。図2:灰色の領域で10^20 eVを超える加速が起きる。宇宙からやってくる高エネルギー粒子、宇宙線のスペクトルは、10^20 eVを超えるエネルギーまで滑らかに冪級数的に伸びている。このような極限的なエネルギーにまで荷電粒子を加速するには、これまでのフェルミ加速機構を超える効率の良い加速機構が必要だとされてきた。Ebisuzaki and Tajima 2013は、ブラッ…
2013年6月2日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 ルーツと青春 李永春家屋 群山に今も残る日本人家屋を見せてもらいました。その一つが、李永春家屋です。ここは、熊本農場を創立して運営した熊本利平氏が1920年に立てた別荘です(写真1)。http://www.seoulnavi.com/miru/2010/ここでは、市役所を退職後、ボランティアでこの家屋の案内をしている。Chang-Yoo Leeさんに話を聞くことができました(写真2)。李博士は熊本氏の援助で、京大に入学し、医学博士を取得しました。韓国で最初の医学博士だったそうです。帰韓後は熊本農場の従業員、小作人の診療に当た…
2013年5月31日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 ルーツと青春 母の故郷訪問 母を韓国の群山に連れて行きました。私の母の明美は、群山で生まれました。小学校6年の時に終戦を迎え、家族とともに着の身着のままで追われるように帰国し、そのまま70年近くが経ってしまいました。この年に祖母は病死したので、年若の4人兄弟姉妹を母親代わりに育て上げ、さらに結婚後は私と妹を育てるという人生を送ったのでした。その中で、群山時代は比較的平穏で懐かしい思い出がある半面、それが突然奪われ、その後悲しい経験をしたので、群山に対しては愛憎半ばする複雑な思いがあったようです。群山鉄工所跡地母の家族は、曾祖父…
2013年1月20日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 気候変動 七世紀初頭の気候寒冷化と隋の崩壊 隋の煬帝は、611年-614年にかけて高句麗遠征を行う。年輪による平均温度の復元結果をみると、このころ気候は急速に寒冷化していた(上図)。煬帝による過酷な徴発とこの寒冷な気候のせいで中国東北地方が、ひどい飢饉となったのだろう。天災に人災が重なった悲惨な例である。西暦611年「ーー耕し稼うるに時を失ひ、田畑は多く荒れる。これに加えるに飢饉し、穀の価はなはだ貴し。東北の辺りもっとも甚だしくーー」資治通鑑隋軍を悩ませたという冬将軍は例年よりずっと厳しいものだったのかもしれない。この後、隋はついに立ち直れず…
2013年1月9日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 気候変動 全球凍結事変のスターバーストモデル 地球の46億年の歴史の中で、原生代に二回(22-24億年前と5.5-7.7億年前)にのみ、赤道まで凍結した全球凍結事変があったことが知られている(Hoffman and Schrag, 2002; Maruyama and Santosh 2008)。全球凍結に至る機構はこの10年における熱心な研究にもかかわらず、よくわからなかった。Kataoka etal. (2013)は、この全球凍結事変の天の河銀河のスターバーストによって引き起こされたとするモデルを提案した。天の川銀河も、星形成率が通常の10…
2012年9月19日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 種の起源と生物進化 世代を超えて蓄積される放射線損傷:チェルノブイリ降下物に慢性的に曝露された小動物 チェルノブイリ事故から10年、22世代にわたり慢性的に放射線に曝露されたハタネズミ(bank vole)野生の個体群の生物学的損傷の蓄積の解析を行った。骨髄細胞における染色体異常と胎児死亡率が、ベラルーシの様々な放射性核種の地上堆積条件における監視領域の個体群の全身吸収放射線量率の時間変化と比較された。低線量率での長期にわたる生物学的損傷は、22世代にわたって蓄積され、染色体異常の増加と胎児の死亡率の永久的な増加を引き起こしている。これは、全身吸収線量率の2.5-3年の半減期で減少するのにともなって…
2012年9月14日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 科学論 佐久間象山、大山益次郎遭難碑 佐久間象山と大山益次郎の遭難碑。京都木屋通り三条の高瀬川のほとりにある。どちらもまず学者として身を起こしたが、国難に際して奔走して、回天の業の先駆けと完成をなした。先見の明により勇気ある発言をしたが、それが災いして非業の死に倒れた。学者たるもの、勇気を持つべし。合掌。…