全球凍結事変のスターバーストモデル

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図2 現在の地球は、太陽から吹く高温プラズマでできた太陽風によりできたヘリオスフェアの中にあり、銀河宇宙線と太陽系外からくる固体微粒子(宇宙塵)が直接地球に降り注がないようになっている。また、成層圏のオゾン層が有害な紫外線Bを吸収している。

図3 暗黒星雲遭遇すると、まず、宇宙塵が地球の成層圏に長期滞留し、太陽光を散乱して、地球を寒冷化させる。また、太陽系内の惑星間空間で、GeV以下の宇宙線が大量に作られて地球に降り注ぎ、成層圏でNOxを形成してオゾン層を破壊する。その結果、紫外線Bが増加し、植物の光合成システムを破壊する。

図4 新星に遭遇したとき、銀河宇宙線量が1000倍増し、その結果として雲被覆率の増加させ、寒冷化を引き起こす(Sventhmark and Friis-Christensen 1997)。

地球の46億年の歴史の中で、原生代に二回(22-24億年前と5.5-7.7億年前)にのみ、赤道まで凍結した全球凍結事変があったことが知られている(Hoffman and Schrag, 2002; Maruyama and Santosh 2008)。全球凍結に至る機構はこの10年における熱心な研究にもかかわらず、よくわからなかった。Kataoka etal. (2013)は、この全球凍結事変の天の河銀河のスターバーストによって引き起こされたとするモデルを提案した。天の川銀河も、星形成率が通常の10-100倍に増加するスターバーストを経験したと考えられており、その時期は上記の全球凍結期とほぼ一致している(Rocha-Pinto et al. 2000; Marcos and Marcos 2004; Svensmark, H., 2007)。スターバースト銀河においては、銀河円盤の大部分は濃い暗黒星雲に覆われ、太陽系が超新星残骸に遭遇する確率も非常に高かったと考えられる。このような星雲(暗黒星雲と超新星残骸)に太陽系が遭遇すると、宇宙塵と宇宙線の地球への降下量がけた違いに大きくなる。これらによる地球環境への影響を調べた。それらは真に破壊的であった。

現在の地球は、太陽から吹く高温プラズマでできた太陽風によりできたヘリオスフェアの中にあり、銀河宇宙線と太陽系外からくる固体微粒子(宇宙塵)が直接地球に降り注がないようになっている(図2)。また、成層圏のオゾン層が有害な紫外線Bを吸収している。

しかし、暗黒星雲遭遇の場合(図3)は、まず、宇宙塵が地球の成層圏に長期滞留し、太陽光を散乱して、地球を寒冷化させる。その強さはアイス・アルベド不安定による地球の全球凍結を引き起こすのに十分な強さである(Pavlov et al. 2005)。また、太陽系内の惑星間空間で、GeV以下の宇宙線が大量に作られて地球に降り注ぎ、成層圏でNOxを形成してオゾン層を破壊する(Ruderman1974)。その結果、紫外線Bが増加し、植物の光合成システムを破壊する(Smith and Baker 1989)。全球凍結と紫外線の増加により地球の基礎生産量は大幅に減少し、大絶滅を引き起こしたと考えられる。

一方、超新星に遭遇したときには(図4)、銀河宇宙線量が1000倍増し、その結果として雲被覆率の増加させ、寒冷化を引き起こす(Sventhmark and Friis-Christensen 1997)。宇宙線による硫酸アエロゾルの増加を通した雲核の形成メカニズムは、複数の実験室実験により確かめられており(Sventhmark2007; Kirkby et al 2011)、太陽の11年周期による20%変動の効果はいざ知らず、宇宙線降下量の1000倍増による自然放射能の増加は、最も保守的な見積もりにおいても、アイス・アルベド不安定による地球の全球凍結を引き起こすのに十分な強さとなる。また、成層圏では、宇宙線によるNOx形成によりオゾン層の破壊する。さらに地上の自然放射能の1000倍増になるため、年間被ばく量は1Sy近くに達することになる。これは、生物にゲノム不安定を引き起こすのに十分な被ばく量である(Dubrova 2006; Aghajanyan et al., 2011)。

詳細な研究によると、全球凍結事変は、寒冷な気候がずっと続いていたのではなく、超寒冷な時期の後に超温暖な気候が続くサイクルが少なくとも数回起こっていることが分かってきた。このような超寒冷/超温暖サイクルの一つ一つが個々の星雲衝突に対応していると考えられる。顕生代にも5回の大絶滅が報告されている。これらも、比較的小規模な星雲衝突と関係しているかもしれない。

1) Hoffman, P.F., Schrag, D.P., 2002. Terra Nova 14, 129.
2) Kataoka, R. Ebisuzaki, T. Miyahara, H., and Maruyama, S. 2013, New Astronomy 21 (2013) 50–62.
2) Svensmark, H., 2007. Astron. Geophys. 48 (1), 1.18.
3) Maruyama, S., Santosh, M., 2008. Gondwana Res. 14, 22.
4) Rocha-Pinto, H.J., Scalo, J., Maciel, W.J., Flynn, C., 2000. Astron. Astrophys. 358, 869. 295.
5) Marcos, R., Marcos, C., 2004. New Astron. 10, 53.
6) Pavlov, A.A., Toon, O.B., Pavlov, A.K., Bally, J., Pollard, D., 2005.
Geophys. Res. Lett. 32, L03705.
7) Pavlov, A.A., Pavlov, A.K., Mills, M.J., Ostryakov, V.M., Vasilyev, G.I., Toon, O.B.,2005. Geophys. Res. Lett. 32, L01815.
8) Ruderman, M.A., 1974. Science 184, 1079.
9) Smith, R.C., Baker, K.S., 1989. Oceanography 20, 4
10) Svensmark, H., Friis-Christensen, E., 1997. J. Atmos. Sol. Terr. Phys. 59, 1225.
11) Svensmark, H. et al., 2007. Proc. R. Soc. A 463, 385.
12) Kirkby, J. et al., 2011. Nature 476, 429.
13) Dubrova, Y.E., 2006. Russ. J. Genet. 42, 1116.
14) Aghajanyan, A. et al., 2011. Envirom. Mol. Mutagen. 52, 538.