世代を超えて蓄積される放射線損傷:チェルノブイリ降下物に慢性的に曝露された小動物
チェルノブイリ事故から10年、22世代にわたり慢性的に放射線に曝露されたハタネズミ(bank vole)野生の個体群の生物学的損傷の蓄積の解析を行った。骨髄細胞における染色体異常と胎児死亡率が、ベラルーシの様々な放射性核種の地上堆積条件における監視領域の個体群の全身吸収放射線量率の時間変化と比較された。低線量率での長期にわたる生物学的損傷は、22世代にわたって蓄積され、染色体異常の増加と胎児の死亡率の永久的な増加を引き起こしている。これは、全身吸収線量率の2.5-3年の半減期で減少するのにともなって、生物学的な損傷も消えるとする仮定と際立った対照をなしている。しかも、捕獲されたメスからの、汚染がない実験室条件下で生まれ育てられた、子供でも同じ染色体異常が同様に高かった。したがって、祖先における慢性的な低線量率被爆による生物学的な損傷が、遺伝的、もしくはエピジェネテック的なパスを通して世代を超えて伝えられ、これらの高い染色体異常率と胎児の死亡率に寄与したと考えられる。
Nadezhda, I, Ryabokon, R, Goncharova, I. 2006, Transgenerational accumulation of radiation damage in small mammals chronically exposed to Chernobyl fallout, Radiation Environ Biophys, 45, 167-177.