わずかな地質学的なデータをつなぎ合わせることにより、原始地球の環境条件が明らかかになりつつある(Sleep 2010)。地球は、月を形成した大衝突(太陽系誕生から、40-50Myr後に発生)による高温状態から出発した。最初の100年から1000年は岩石の蒸気で覆われていた。衝突でできた深いマグマ海は、200万年ほど続いた。その冷却率はそれを覆う水蒸気やその他の温室効果ガスの量で決まる。マントルが固化すると大気中の水蒸気が、液化して500Kの温かい海を形成しその上を約100バールの二酸化炭素が覆うこと…
地球における生命の発生には、生物学的な情報を維持し進化させることが可能な、自己複製化学反応系の成立が必要である。自己複製RNAが一つしかないRNAワールドでは、自分自身の情報を維持するためと寄生的な分子に対して十分に高い競争力を保つために、変異率を十分に下げることが重要であるが、それが非常にむずかしいことが分かってきた。理論的な解析ではお互いに相互作用する複数の分子のネットワークの方が、生命らしいふるまいをする化学反応系を発展させやすいことが分かっている。Vaidya et al. (2012)は、…
現在のゲノムの複製過程で働いているtRNA様構造はすべての生物に存在し、高く保存されている。tRNAの機能はたんぱく質の鋳型形成が始まる前、つまりRNAワールドにおいて既に存在していたと考えられる(Maizels and Weiner 1994)。現代のtRNAの上半分つまりTψC配列と受容ステムが最も古い機能要素で、残りの下半分は特異性を向上させるために付加されたと考えられる(図左上)。QβバクテリオファージはRNAファージでその3末端はCCAで終わるtRNA様構造を持っており、これがレプリカーゼ…