アエロゾル密度による海洋境界層における雲被覆率の急激な変化

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図5 海洋上の大気の境界層は、雲核の数密度によって、以下の3つの分かれたモードを示す。

図6 アエロゾル密度が30-40 cm^-3に増えると、降雨が抑えられて、対流セルが開かれたものから閉じたものに変わる。

海洋上の大気の境界層は、雲核の数密度によって、以下の3つにのはっきり分かれたモードを示すことが分かった(Rosenfeld et al. 2006、図5)。1)雲核に富む海洋境界層は、閉じたベナード対流セルを形成し、ほぼ完全に雲に覆われる。このような場所では、対流の駆動が雲頂における冷却によって駆動される。つまり、雲頂で冷やされた雲はセルの外壁に沿って落下し、それを補償するためセルの中央に上昇流が生まれる。2)雲核が少ない海洋境界層は、開かれたベナード対流セルを形成し、雲被覆率が40%以下になる。このような場所では、対流は海上を照らす太陽熱によって駆動される。温められた空気は外壁に沿って上昇し、それを補償するためにセルの中央に下降流が生まれる。3)雲核欠乏海洋境界層は、雲核の欠乏のために雲ができないので、雲がない。

この3つのモードの遷移はアエロゾル密度が制御している。アエロゾル密度が30-40 cm^-3に増えると、降雨が抑えられて、対流セルが開かれたものから閉じたものに変わる(図6)。逆に、降雨によりアエロゾル密度が30-40 cm^-3以下に減ると、さらに降雨が激しくなって、アエロゾル密度が4cm^-3 まで急速に減る。このような対流モードの遷移は、清浄な空気の背景アエロゾル密度(数―数十cm^-3)ぐらいで起こる。

このような境界層対流セルのモードの変化により、雲の被覆率はアエロゾル密度に極めて敏感に反応することが分かった。宇宙線の増加による海洋上でのアエロゾルの数密度の増加はこのようなメカニズムでを通して気候変化に大きな影響を与える可能性が出てきた。

1) Rosenfeld, D., Kaufman, Y.J., and Koren, I. 2006, Switching cloud cover and dynamical regimes from open to closed benard cells in response to the suppression of precipitation by aerozols, Atms. Chem. Phys., 6, 2503-2511.