海洋低層雲の日夜サイクル

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図7 開かれた対流セルモードの日変化

図8 閉じた対流セルモードの日変化

雲解像シミュレーションを行って、海洋上の境界層における対流モードが、アエロゾル数密度の変化で、降雨(開かれた対流セル)モードと非降雨(閉じた対流セル)モードの二つのモードにはっきりと分かれることが確認された(Jenkins et al. 2013)。数値実験は、南外洋のの清浄なアエロゾル密度条件と東シナ海の汚染の進んだアエロゾル密度条件で行われた。清浄な条件では、降雨がある開かれた対流モードが卓越した(図7)。夜に雲被覆率が上がるが、朝早期に晴れあがる(c,e)。夜間に降雨があり(d)、アエロゾル密度は低く保たれる(a)。一方、汚染条件では、降雨がない閉じた対流モードが卓越した(図8)。午前中まで雲の被覆率が高く、晴れあがりは午後にずれ込む(c,e)。海洋への太陽の直射が少ないので対流は発達せず、降雨もまったくない(d)。このためアエロゾル密度は高く保たれる(a)どちらの条件でも雲の被覆率が日夜サイクルを強く現れた(夜は100パーセント雲、昼はほとんど雲なし)が、汚染条件では、晴れあがる時間が遅く、平均の雲被覆率は有意に高くなった。

アエロゾルが少ない清浄条件では、夜は雲りがちになるものの、朝早く(午前8時ごろ)にそれが消え、太陽が差し込んで対流が発達し、夕方には降雨がある陽性の天気になる。一方、アエロゾルが多い汚染条件では、夜から昼過ぎまで雲の覆われて、対流が発達せず、雨も降らないどんよりした陰性の天気になる。後者の面積が多いと、平均の雲被覆率が増え、地球の平均アルベドが上昇するため、寒冷化が進むと考えられる。

また、このような強い日夜サイクルを考慮すると、午後1時30分ごろしか観測しないMODIS衛星などの太陽同期軌道にある衛星による観測結果の解釈には、大変注意が必要であることを示唆している。

さらには、雲を解像せず、日夜サイクルもあまり考慮しない気候シミュレーションモデルを信じて、気候変動を議論することも大変危険であることが分かる。

1) Jenkins, A. K., Forster, P.M., and Jackson, L.S. 2013, The effects of timing and rate of marine cloud brightening aerosol injection on albedo changes during the diurnal cycle of marine stratcumulus clouds, Atmos. Chem. Phys., 13, 1659-1673.