2016年12月29日 / 最終更新日時 : 2023年4月29日 戎崎 俊一 生命の起源 脂質膜の初期進化と細菌と古細菌の分岐 すべての細胞膜は、グリセロールリン酸のリン脂質でできており、その共通性が最終共通祖先(LUCA)の存在の根拠の一つになっている。しかしながら、リン脂質の生合成経路は、細菌と古細菌で非常に違っているので、それらの最終共通祖先は、リン脂質膜を持っていなかったのではないかとの疑いがもたれていた。Lombard et al 2012によると、最近の系統樹の研究はそれを支持せず、LUCAはむしろ両者の要素を持つ複雑なリン脂質膜を持っていたことを示唆している。細菌と真核生物は、同じ細胞膜を持っている。それはgl…
2015年4月14日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 生命の起源 鉱物の光触媒による太陽エネルギーを使った非光栄養微生物の増殖 化学独立栄養生物は、水素、アンモニア、亜硝酸塩などの無機化合物を酸化することによりエネルギーを得て二酸化炭素から有機化合物を作る。これまで、太陽光に依存した代謝の中で、これらの非光独立栄養生物の役割は考慮されてこなかった。彼らは光に感度を持つ化合物を持っていないからである。しかし、彼らが、半導体鉱物などの無機的な媒介物を通して太陽エネルギーを得ることは可能である。光独立栄養代謝の進化には金属と金属を含んだ鉱物の役割が重要であるように、鉱物は非光独立栄養生物に太陽エネルギーを提供するのに重要な役割をし…
2015年4月2日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 生命の起源 還元TCA回路の光触媒による駆動 還元TCA回路におけるオキザロ酢酸からリンゴ酸(1)、フマール酸からコハク酸(2)、コハク酸からオキソグルタル酸(3)、オキソグルタル酸からオキザロコハク酸(4)、オキザロコハク酸からイソクエン酸(5)の5つの還元反応が、硫化亜鉛 (ZnS)のナノ粒子の光触媒効果によって、駆動されることが分かった(Zhang and Martin 2006)。反応を駆動する還元力は半導体であるZnSの伝導帯電子が供給する。伝導帯電子を作るために、3.6eV (344 nm)以上の紫外線を必要とする。反応(3)と(4…
2014年11月24日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 生命の起源 放射線により励起されたCO2の還元反応 水中の二酸化炭素が2-10のpH範囲で、ガンマ線の照射下で、還元されることは1960年代に発見され報告されていた。この反応においては、水和電子が水中のCO2の主要な還元剤である。メタノール、CO、O2の他に、主要な最終生成物として、アルデヒド類、蟻酸、酢酸、グリコール酸、グリオキサール酸、蓚酸が作られる(Getoff 1994)。まず、水の放射分解によりeaq-、H、OH、H2、H2O2、H+、OH+が作られる。これらがCO2と反応してCO2+eaq-→C.O2-CO2+H→C.OOH or HCO…
2014年7月14日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 生命の起源 光酸化還元反応によるアルデヒド的リボヌクレオチドとアミノ酸前駆物の合成 RNAの前生的な起源の理解のために、Ritson and Sutherland (2012)は、Kiliani-Fisher反応による、シアン化銅の光酸化還元サイクルを使ったシアン化水素1からの単純な糖の合成を示した。それは以下のように進行する。まず、光酸化還元反応が、シアン化水素1を酸化してシアンノゲン2を作り、陽子と水和電子の形の還元力を生み出す。それらはシアン化水素1をさらに還元してホルムアルデヒドイミンを作る。そのホルムアルデヒド4への加水分解に次いで、シアン化水素1が付加されてグリコールア…
2014年7月14日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 生命の起源 光化学酸化還元反応システムによる前生的な単純糖の形成 前生物的条件における活性化されたピリミジンリボヌクレオチドの合成反応には、酸素的化学反応と窒素的化学反応が混じっている(Powner 2009)。グリコールアルデヒドやグリセルアルデヒドなどの糖の構成要素が、一炭素分子の原料から同様な酸素・窒素混合化学反応系によって作られることが示せれば、RNAが生命の起源にかかわっているという仮説の証拠がより強くなる。Riston and Sutherland (2012)は、これらの糖が、シアン化水素から銅・シアン化物複合体の存在下で、紫外線照射によって作られる…
2014年6月6日 / 最終更新日時 : 2023年4月10日 戎崎 俊一 生命の起源 火山におけるシアン化合物の合成:Formation of Cyano-compounds Mukhin(1976)はカムチャッカと千島列島の活火山で熱水領域の液体試料とAlaid火山の岩滓領域からガスサンプルを取得した。Alaid火山からのガス試料の温度は900-1000°Cで、0.01mg/lのCN-が含まれていた。Govnin火山の沸騰湖と、国後島とカムチャッカ半島のボアホールの液体サンプルからはCNS-イオンを検出した。Uzon火山のカルデラからの液体資料からはフェロシアンイオン(Fe(CN)6-3とFe(CN)6-4)が検出された。火山ではマグマによる高温を使って、シアン化合物が…