鉱物の光触媒による太陽エネルギーを使った非光栄養微生物の増殖
化学独立栄養生物は、水素、アンモニア、亜硝酸塩などの無機化合物を酸化することによりエネルギーを得て二酸化炭素から有機化合物を作る。これまで、太陽光に依存した代謝の中で、これらの非光独立栄養生物の役割は考慮されてこなかった。彼らは光に感度を持つ化合物を持っていないからである。しかし、彼らが、半導体鉱物などの無機的な媒介物を通して太陽エネルギーを得ることは可能である。光独立栄養代謝の進化には金属と金属を含んだ鉱物の役割が重要であるように、鉱物は非光独立栄養生物に太陽エネルギーを提供するのに重要な役割をしている可能性がある。半導体鉱物であるルチル(TiO2)、閃亜鉛鉱(ZnS)、ゲータイト(FeOOH)は自然界における光触媒反応に関与している。入射光の光子のエネルギーが、価電子帯と伝導帯の間の禁止帯のエネルギー間隔以上だと、光電子・正孔ペアがそれぞれ伝導帯と価電子帯に作られて、エネルギーを放出して還元反応を駆動する。このエネルギーは、間接的に非光独立栄養生物によって回収される可能性がある。
Lu et al. (2012)は、太陽エネルギーが光触媒半導体によって化学エネルギーに変換され非光独立栄養生物の成長を助長することを実験で確認した。微生物の増殖速度が、照射した光の強さと波長に依存することが示され、それが光触媒半導体の吸収スペクトルと一致することが確認された。光子から生体物質への変換効率は0.13-1.90‰で、通常の光合成に比べてかなり非効率である。
1) Lu, A. et al. 2012, Growth of non-phototrophic microorganisms usingsolar radiation through mineral photocatalysis, Nature Communications, 3, 768.