放射線により励起されたCO2の還元反応
水中の二酸化炭素が2-10のpH範囲で、ガンマ線の照射下で、還元されることは1960年代に発見され報告されていた。この反応においては、水和電子が水中のCO2の主要な還元剤である。メタノール、CO、O2の他に、主要な最終生成物として、アルデヒド類、蟻酸、酢酸、グリコール酸、グリオキサール酸、蓚酸が作られる(Getoff 1994)。
まず、水の放射分解によりeaq-、H、OH、H2、H2O2、H+、OH+が作られる。これらがCO2と反応して
CO2+eaq-→C.O2-
CO2+H→C.OOH or HCO.O
さらに、
2C.O2-→(CO2-)2 蓚酸塩(5)
2C.OOH→(COOH)2 蓚酸(6a)
→CO2+HCOOH 蟻酸(6b)
2HCOO.→2HC.O+O2 (or HCOOH +CO2) 蟻酸(7)
2HC.O→CO+HCHO ホルムアルデヒド(8a)
→(HCO)2 グリオキサール(8b)
HC.O+C.OOH→HCO.COOH グリオキザル酸(9)
C.OOH/HCOO.+HCO→C.H2OH+CO2
2C.H2OH→(CH2OH)2 グリコール(11a)
→CH3OH+HCHO メチルアルコール(11b)
C.H2OH+C.OOH/HCOO.→CH3OH + CO2 メチルアルコール(12)
C.H2OH+HC.O→HCO.CH2OH グリコールアルデヒド(13)
などの反応が進む。
一方、pHが高い場合には、重炭酸イオンと炭酸イオンが炭素源になる。これらは、OHラジカルと反応して反応性の高い化合物に変化する。
HCO3-+OH→HCO.3+OH-
→CO.3-+H2O
CO32-+OH→CO.3-+OH-
HCO.3とCO.3-は、以下の反応により蓚酸塩類になる。
2HCO.3→O2+(C.OOH)2 or HCOOH +CO2 蓚酸
2CO.3→O2+(C.O2-)2 蓚酸塩
さらに8aの反応で作られたCOは、以下の反応に関与する。
CO+OH→C.OOH
CO+H→HC.O
CO+eaq-→CO.aq-(20)
反応20の生成物のCO.aq-はHCCOH-と等価である。この反応は蟻酸塩を合成する連鎖反応をスタートする。
HCOOH-+OH-→HCOO- +eaq- 蟻酸
1) Getoff, N. 1994, Possibilities on the radiation-induced
incorporation of CO2 and CO into organic compounds, Int. J. Hydrogen Energy, 19, 667-672.