2015年1月6日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 音楽映画評 「風立ちぬ」を観た。 堀越二郎の一連の戦闘機開発の物語、堀辰雄の同名小説、そしてトーマス・マンの「魔の山」の要素を3:3:1ぐらいの割合で混ぜて、宮崎監督の夢と想像力で固めてできた史上初(たぶん)の純文学アニメ作品である。技術者・開発者として面白い挿話はいたるところにあった。サバの骨の形が美しいという二郎の感覚は正しい。流体の抵抗がすべてを決める水中にすむ魚の形と飛行機の揚力を生む翼断面の形が同じなのはたぶん理由がある。独自の工夫で無様なあひるの子を作った亀(二郎)の勇気が大事だ。その失敗の経験は次につながる。二郎は、飛…
2015年1月6日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 ルーツと青春 私の自由研究 私は山口県下関市彦島に住んでいた。本州の西端、九州に向かって突き出した岬の先端にある島である。彦島は造船で栄えた町だった。しかし、もう当時は韓国との厳しい競争に晒されて、構造不況に島全体があえいでいた。そのためか、島にはたくさんの空き地があった。どこも草が伸び放題。盛大に葉っぱを伸ばしたカヤの大株があちこちに見られた。私の家はそんな原っぱの中にあった。私は、カヤの葉の中心を走る白い葉脈に赤い斑点が点々とついている場合があることに気がついた。この斑点の原因は何か?それをつきとめることを研究テーマにした…
2015年1月6日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 ルーツと青春 H君とK君 H君とK君は、私の中学3年のころの友達である。彼らと深く交わるようになったきっかけは井上靖の小説「夏草冬濤」であったと思う。その後半に主人公とその友達が、文芸(哲学だったかな)同好会を作り、学校の各クラスを回って、演説し会員の勧誘をするエピソードがあった。当時それがNHKのドラマになって放映された。放映の次の日H君とK君が二人して私のところのやってきて、「あれがとてもよかった。ぜひ自分たちも同じようなことをしてみたい。ついては一緒にやらないか?」と私を誘ったのである。600人もいた同級生からなぜ私が…
2015年1月6日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 金・銀・銅の日本史 村上隆著 金・銀・銅は贅沢な装飾品として、通貨として歴史を動かす「富」そのものだった。日本はかつて豊かな産出量を誇り採鉱、精製錬、金属加工技術は驚くべき高みに達していた。そこにはハイテク日本のルーツである、工人の創意工夫が少なくとも1500年の歴史を持つものであることが、埋葬・副葬品、芸術作品や飛鳥池遺跡、石見銀山などの産業遺跡調査の結果から浮かび上がる。…
2015年1月6日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 韓国併合への道(完全版) 呉善花著 韓国の李朝末期から、日本による韓国併合とその統治、そして戦後の韓国における反日政策について淡々と描かれている。李朝末期、西欧による植民地化が迫る中、韓国では貴族階級である両班たちは民衆の困窮を顧みず、派閥の闘争に明け暮れて国政改革が進まない。宗主国である清国の軍隊は、民衆・市民を略奪して憚らない。日本の支援を当てにした金玉均のクーデターは失敗し、韓国内からの改革の可能性はなくなった。親日勢力が後退するなか、親露派のクーデターが起き、国王がロシア公館に居住するなど、李氏朝鮮はロシアの保護国になり下がっ…
2015年1月6日 / 最終更新日時 : 2023年4月26日 戎崎 俊一 その他 日本の首相はなぜ靖国神社に参拝しないといけないか? 今年もまた夏を迎えて、首相の靖国神社参拝が国際的な話題になりそうだ。私は研究者で定常的に外国人と議論している。その中で閣僚の靖国神社参拝が外国人にまったく誤解されている可能性を感じたので、警鐘を鳴らしたい。普通、神社に参拝すことを辞書に従ってworshipと訳する。これが誤解のもとだと思う。戦前の軍国主義者、戦争責任者たちも祭られている神社に手を合わせる行為は、彼らを崇拝し同様の行為を取ろうとする意志の表れと外国人には理解される。しかし、そうでは全くないと私は思う。むしろ、明治以降の戦争に関係した行…
2015年1月6日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 野火 大岡正平著 これは、学生時代から読まねばならないと思っていた本の一つだった。テーマの重さから、読む気力が湧かず、今日まで延ばし延ばしにしていた。中原中也を読んだ勢いで、読んでみた。主人公の田村はフィリピンに派兵された。そして、愚劣な作戦の失敗で敗北しつつあり、全体として強盗集団に成り下がった日本陸軍の中にいた。無理な行軍で肺病が進んで喀血し、食糧略奪行に耐えない彼は、本隊を追い出されたが、食糧を持たない患者を病院は受け入れない。行く場所のない彼は、同様の境遇の見捨てられた日本兵の集団に入る。病院は米軍の砲撃を受…