2019年4月27日 / 最終更新日時 : 2023年4月10日 戎崎 俊一 天体物理学 超高精度の時計が切り開く未来 海底・宇宙で展開、自然災害の予兆把握 私の同僚の香取秀俊・理化学研究所主任研究員(東京大学教授との兼任)は相対精度が10の18乗に及ぶ超高精度の時計を開発している。これは約1000個の原子(セシウムやストロンチウム)をレーザーで作った格子状の井戸の中に閉じ込めて冷却し、高統計・高精度でそのスペクトル線を測定する装置で、光格子時計といわれている。 一般相対性理論によると、重力ポテンシャルの中では時間の進みが遅い。つまり、地上でも低い場所の方が高い場所よりほんのちょっと時の進みが遅いことになる。そこで、東京都文京区にある東大と埼玉県和光市に…
2019年2月28日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 地震と津波防災 自然災害多発で高まる必要性、求められる本格的な病院船 病院船とは戦争や大災害の現場で、傷病者に対して医療サービスを提供するための船舶である。2回の世界大戦においては、客船を改造した病院船が活躍した。現在はアメリカ海軍の病院船マーシーが有名である。タンカーを改造してできたマーシーは排水量6万9360トン、1000病床、12の手術室を有する堂々たる総合病院である。コンピューター断層撮影装置(CT)や超音波検査装置など最新の診断装置を備え、各種の医療用ガス、真水(1日281トン)を生産する能力を持つ。2004年に発生したインドネシア・スマトラ島沖地震による…
2018年12月20日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 地震と津波防災 パル地震による津波災害と、パルと東京の地形の類似性 今年9月28日、インドネシア・スラウェシ島でマグニチュード7.5の地震が発生した。それに伴って、島中部に位置する中スラウェシ州の州都パルの町を波高6~10メートルの津波が襲い、2000人を超える犠牲者を生む大災害を引き起こした。パル湾を南北に走るパル・コロ断層の横ずれが地震の原因であり、当初あまり大きな津波が発生するとは考えられていなかった。 パルは南北に伸びるパル湾の湾奥に位置している。湾口部および湾内で発生した同時多発海底地滑りが、その原因ではないかと推定されている。実際、地上でも、傾き1度程度…
2018年10月24日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 科学論 ジェラール・ムルー氏のノーベル物理学賞受賞を祝う 今秋、ジェラルド・ムルー氏がノーベル物理学賞を受賞された。受賞理由は、レーザーのチャープパルス増幅法の発明である。この手法を使うことにより、レーザーパルスの継続時間を圧縮し、高強度(ペタワット=10の15乗ワット)を作ることが可能になった。 ペタワットの強度の実現は、レーザー航跡場加速に道を開いた。ペタワットレーザーパルスの中の電子は、レーザーの横向き電場による運動が相対論的に、つまり速度がほぼ光速になる。このことによる非線形効果のために、高強度パルスがプラズマ中を伝搬すると、強い航跡場がその周りに…
2018年8月24日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 科学論 伊能忠敬の挑戦 伊能忠敬は1795年に佐原から江戸に出て幕府天文方の高橋至時に入門し、天文学を本格的に始めた。当時彼は50歳だった。測量においては天測が重要である。例えば、現在のカーナビはGPS衛星を「天測」して自分の位置を割り出す。天文学と測量学、そして暦学は本来一体のものである。至時らは、最新の天体力学理論を考慮した「寛政暦」を1797年に完成させるが、さらに精度の高い暦を作るためには、地球の半径を知る必要があることに気づいた。例えば、地球の半径は子午線1度の弧長から計算できるが、当時日本で知られていた値には1…
2018年6月22日 / 最終更新日時 : 2023年4月18日 戎崎 俊一 人工脳 「人工小脳」の衝撃 高制御機能が生産現場を革新 人間の小脳には、約690億個の神経細胞が存在している。これは、大脳を含めた脳全体の神経細胞数の約80%である。小脳は超並列型万能予測器として機能しているとされている。大脳皮質が出力する大まかな運動指令を過去の経験に基づいて適切に調節し、身体の各パーツが同調して滑らかに動くのを助けている。 練習すると次第に動きが迅速にかつ滑らかになるのは、小脳が適切な運動の大きさとタイミングを記憶する過程である。視覚や聴覚からのフィードバックを基にする場合、時間遅れのために偏差や振動が発生してしまう。 一方、小脳は…
2018年2月23日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 気候変動 太陽活動の弱化がもたらす天候不順と政変・戦乱の時代 太陽の磁気活動は、約11年の周期で増減している。その振幅は常に変動している。例えば1645~1715年はほとんど黒点が観測されなかったので、マウンダー極小期と呼ばれている。そのほかにも1280~1340年のウォルフ極小期、1450~1570年のシュペーラー極小期、1790~1820年のダルトン極小期などが知られている。 1870年ごろから1930年にかけては極小期ほどではないが、太陽活動があまり活発でなかった。しかし、1940年ごろから2000年にかけて非常に活発化した。その後急速に弱化して今に至…