太陽活動の弱化がもたらす天候不順と政変・戦乱の時代

太陽の磁気活動は、約11年の周期で増減している。その振幅は常に変動している。例えば1645~1715年はほとんど黒点が観測されなかったので、マウンダー極小期と呼ばれている。そのほかにも1280~1340年のウォルフ極小期、1450~1570年のシュペーラー極小期、1790~1820年のダルトン極小期などが知られている。
1870年ごろから1930年にかけては極小期ほどではないが、太陽活動があまり活発でなかった。しかし、1940年ごろから2000年にかけて非常に活発化した。その後急速に弱化して今に至っている。2013年ごろピークを迎えたサイクル24は、1906年以来の弱さだった。専門家はこのままダルトン極小期のような状態に入るのではないかと心配している。
太陽活動の弱い時期は、地球の気候は平均気温が少し(1~2度)低い小氷期になることが経験的に知られている。また、小氷期においては気候変動の振れ幅が大きく、異常気象の連続が常態になる。「50年に1度」の記録的異常気象が頻発する現在の状況は、既に小氷期に入りかけていることを示唆している可能性がある。
なぜ、太陽活動が地球の気候に影響を与えるのかはあまりよく分かっていない。太陽風が弱いと太陽から吹くプラズマの風(太陽風)が弱いため、太陽圏が収縮する。このため、太陽系外からの高エネルギー宇宙線が浸入しやすくなり、地球の雲に覆われる面積に影響を与えるためではないかと考えられている。
雲は白いので、雲の被覆率が多いと地球が受け取る太陽熱が減る。ただし、雲の形成過程は複雑でまだ分からないことが多く、専門家の間でまだ議論が続いている。
太陽活動極小期(小氷期)には、天候が不順で飢饉(ききん)が頻発し、戦乱も多い。例えば日本の戦国時代(1467~1587年)はほぼシュペーラー極小期に対応している。ウォルフ極小期に入る直前の1279年にモンゴルの南下と南宋の滅亡が、マウンダー極小期に入る直前の1644年には清の南下と明の滅亡が、ダルトン極小期開始直前の1789年にフランス革命が起こっている。
特に、現在のように極小期に入る直前は、大規模な政変が起こることが多い。東アジアにおいては、朝鮮半島北部、中国東北部、モンゴル平原の民族が南下して大規模な戦乱が続く。この点でも現在の東アジアの政治的状況に符合する向きがないこともない。
日本および世界の指導者は「衣食足りて礼節を知る」幸せな50年が終わり、「衣食が足りないので礼節は知らない」大変な50年が始まることを認識し、食糧の備蓄をしっかり行い、東アジアおよび世界規模の戦乱に備える必要がある。

フジサンケイビジネスアイ 高論卓説 2018年2月23日 許可を得て転載