2016年12月29日 / 最終更新日時 : 2023年4月29日 戎崎 俊一 生命の起源 脂質膜の初期進化と細菌と古細菌の分岐 すべての細胞膜は、グリセロールリン酸のリン脂質でできており、その共通性が最終共通祖先(LUCA)の存在の根拠の一つになっている。しかしながら、リン脂質の生合成経路は、細菌と古細菌で非常に違っているので、それらの最終共通祖先は、リン脂質膜を持っていなかったのではないかとの疑いがもたれていた。Lombard et al 2012によると、最近の系統樹の研究はそれを支持せず、LUCAはむしろ両者の要素を持つ複雑なリン脂質膜を持っていたことを示唆している。細菌と真核生物は、同じ細胞膜を持っている。それはgl…
2016年12月15日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 地震と津波防災 海底地滑りによる津波災害拡大 2011年3月11日の東日本大震災では、巨大津波が1.5万人を超える人命を奪い、東北地方太平洋沿岸に未曽有の災害をもたらした。このときの津波データを見ると、震源に近い仙台市周辺よりもかなり北に偏った岩手県陸前高田市から同宮古市にかけての三陸沿岸を並はずれて高い40メートルの津波が襲来したことがわかる。このような現象は、リアス式海岸の地形効果のみで説明できるのだろうか。 東京大学のゲラー教授ら国際チームは、津波の波形データを詳細に調べた。その結果、津波の観測データを説明するためには、震央に近い波源の他…
2016年12月15日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 天体物理学 深刻化するスペースデブリ問題 研究本格化を 宇宙ごみ(スペースデブリ)は、地球衛星軌道を周回する不要な人工物体だ。宇宙開発の活発化に伴い増え続けており、約3000トンのスペースデブリが地球周回低軌道に存在するといわれている。その速度は弾丸よりも速い秒速10キロメートルに達するため、小さなスペースデブリであっても、人工衛星や宇宙ステーションに衝突すれば致命的な損傷を与える可能性がある。スペースデブリ同士の相互衝突により増加したスペースデブリが、他のスペースデブリや衛星に衝突することで、さらに増殖することが懸念されている。実際、2000年から14…
2016年12月15日 / 最終更新日時 : 2023年4月18日 戎崎 俊一 人工脳 人間の脳を超えるスパコンで人間性の実証的研究 人間の脳は、どれくらいの性能の電子計算機と等価なのだろうか。神経細胞の数は約1000億個といわれている。1つの神経細胞は、約1ミリ秒に1回、1000から1万個の別の神経細胞から情報を得て、自分の興奮状態を決めると教科書には書いてある。そこで行われる演算は「積和演算」だ。それが1000億個あることを考慮すると、1秒間に20京~200京の速度を持つ計算機で、人間の脳と等価になる。 最近は、脳の神経細胞の性質が、詳しく分かるようになっている。神経細胞の多くは小脳にあって、その大部分の入力数はかなり小さい。…