2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 戦争の技術 マッキャベリ著 マッキャベリは、当時蔓延していた傭兵雇用を批判し、古代ローマの軍制にならって、歩兵を核とする市民兵の制度を提案する。それは、近代的な国民軍の思想的な支柱となった。
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 人類哲学序説 梅原猛著 筆者は、日本に「草木国土悉皆成仏」という固有の偉大な思想があり、西洋合理主義を超えて現代文明を救う可能性がそこにあると説く。確かに、地球に多すぎるのは二酸化炭素ではなく、人口である。二酸化炭素を減らしても、人口を減らさないと環境破壊は止まらない。人間中心主義を超克し、しかも人類の福祉を向上させる道は本当にあるのか?の答えは、まだこの本でも提示されていない。…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 円の誕生 近代貨幣制度の成立 三上隆三著 幕末の開国で大規模な金貨の流出による経済的混乱が発生した。倒幕して日本の実権を握った明治政府は、早々に貨幣制度の整備を迫られる。不平等条約を押し付けた列強との厳しい通商交渉を進めてきた日本は、海外との通商に耐え、国内経済に大きな支障を与えない貨幣制度を模索し、ついに明治4年新単位「円」の誕生させるに至る。これにより、日本の世界経済へのスムーズな参入が果たされた。…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 鉄から読む日本史 窪田蔵郎著 鉄を制するものが天下を制する。鉄器の輸入から始まった鉄の利用は、武器、農具に広がり国の経営になくてはならないものになっていった。岡山県、島根県では、他の地域に先行して砂鉄を使って国産化が進む。やがて、鋳造鍛錬技術の精華である日本刀や、戦国時代を制した鉄砲が作られるようになってゆく。製鉄技術は、宗教と密接に結びつき、荒神、金神、八幡信仰、稲荷信仰など、日本独自の信仰と習俗を生み出した。本書の後半には、鉄穴流しによる砂鉄の採取、タタラ製鉄の実際が具体的に記述されていて興味深かった。…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 積み過ぎた箱舟ーカメルーン動物記 ジェラルド・ダレル著 1947年の著者のカメルーンへの野生動物採集旅行の顛末を書いた本である。カメルーンの密林とそこに住む珍しい動物たち、そして原住民に対する筆者のあふれるほどの好奇心と愛情が伝わってくる好著だ。採集したサルたちも飼われている間にダレルを大好きになってしまったのか、彼と友情に似た心の交流を示しているのは興味深かったし、楽しかった。まるで動物の言葉がわかるドリトル先生の物語のようだ。カメルーンは、ゴンドワナ大陸が南アメリカとアフリカの二つの大陸に分裂したときの湧昇点の一つでおり、カーボナタイトを含む超アルカ…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 Prelude to Foundation, Isac Asimov著 アシモフによるSFの傑作ファウンデーション三部作の序章として、後で書かれた作品である。ファウンデーション三部作では、銀河帝国が崩壊した後、長く続くはずの戦乱に満ちた暗黒時代を短縮するために科学技術の粋を集めたファウンデーションという組織を辺境の惑星テルミスに設置するという設定になっている。ファウンデーションはハリ・セルダンという数学者が創始した心理歴史学(psychohistory)という理論的枠組を用いて、銀河帝国最後の首相となったセルダンの主導で企画されたという設定になっていた。本書は、若いハリ…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 フランス・プロテスタントの反乱 カミザール戦争の記録 カヴァリエ著 フランス絶対王政の最盛期を画するとされるルイ14世が、プロテスタントの信仰の自由を保障したナント勅令を破棄して、プロテスタントの弾圧を始める(1685年)。弾圧に耐えかねた南フランス、セヴォンヌ地方の農民たちは、ついに1702年に信仰の自由を求めて蜂起する。カヴァリエは、カミザールと呼ばれた蜂起軍の軍事指導者の一人である。彼らは、ゲリラ戦のお手本のような戦い方で、10倍するフランス正規軍と2年間戦う。しかし、海外からの援助も遅れ、次第に追い詰められてゆく。カヴァリエは、体制側と交渉の道を探り、信仰の…