2015年11月8日 / 最終更新日時 : 2023年4月18日 戎崎 俊一 書評 大秀才・吉田松陰の「夢」 ペリーと海外に渡っていたら日本の歴史は変わった 明治維新の思想的柱となった吉田松陰の著作集を読んだ。松陰は、明治維新とその後の日本を語るには欠かせない思想家だ。当時、西欧諸国のアジア進出が進み、既に清は蚕食されて国の体をなしておらず、日本も遠からず同じ運命をたどる危機にあった。どうやって日本の独立を守るか。彼の思考はその一点に集中する。彼の出した処方箋は、以下の3つに集約されると思う。 1)鎖国をやめ開国して、諸外国と対等に付き合う。 2)海外の進んだ科学技術を学んで、殖産興業、富国強兵に努める。 3)天皇の直下に大学を作り、教員も学生も身分に…
2015年7月30日 / 最終更新日時 : 2023年8月9日 戎崎 俊一 書評 聖徳太子 「聖徳太子」(梅原猛著)によると、聖徳太子が活躍した6世紀終わりから7世紀初めの東アジア情勢は、現在に似ているという。中国において、300年ぶりに南北中国を統一した巨大な隋帝国が出現した。隣国は、隋帝国の侵略に戦々恐々としていた。朝鮮半島には、高句麗、百済、新羅が鼎立(ていりつ)し、互いに軍事および外交において、しのぎを削っていた。 著者によると、聖徳太子は煬帝を深く尊敬していたに違いないという。実際、聖徳太子が派遣した遣隋使は「海西の菩薩天子」と煬帝のことを表現している。仏教を厚く信仰し、仏教に…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月18日 戎崎 俊一 書評 同時代史 タキュトス著 西暦68年、暴君として有名なネロが自殺した。それは帝政ローマを全土を覆う泥沼の内戦の序曲でしかなかった。各地の総督がそれぞれの軍隊に担がれて、皇帝になったからである。それらは、ガルバ(ヒスパニア)、ウッテリウス(ゲルマニア)、ウェスパニアシウス(エジプト)である。軍隊では、下剋上が進行していた。将軍が権威を失って兵士のご機嫌をうかがっていた。ボーナスや利権を約束しなければ、兵士により弾劾されて将軍職を解かれ、非難され、処刑された。次に立つ者も同様の道をたどる。当然、軍隊による略奪と私的報復が横行し、…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 チベット旅行記 河口慧海著 漢訳仏典の疑義を糺すため、より原典に近いチベットの仏典を得ることが必要と判断し、当時厳重な鎖国をしくチベットへの入国を決心する。海路カルカッタへつき、万全の準備(語学など)の後、ヒマラヤからチベット国境を超える。あらゆる困難を超えて目的を果たした男。100年前にこんな日本人がいた。…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 イブン・ハルドゥーン著「歴史序説3」 この巻はビジネス論と学問論前半。いくつか抜き書きする。極めて実践的。きっとイスラム精神の神髄が含まれているのだろう。「能力がないが信頼できる人」と「能力はあるが信頼できない人」しかいない場合、どちらを雇う方が好ましいか?いずれもそれぞれ利点はあるが、結局は信頼できないが能力がある人を雇う方がよい。能力の点では損害を被ることはなかろうと期待できるし不実については、できるだけ注意して防ぐことができる。最も良い教育法は算術から始めるべきである、なぜなら、これは明晰な知識と組織的な証明に関係するからで、一般…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月7日 戎崎 俊一 書評 「文明論之概略」福沢諭吉著 1985年(明治8年)という明治維新後早い段階で、西洋文明と日本および中国の文明の比較・分析し、ほぼ正確にそれらの本質をとらえ、日本の進むべき方向を的確に示した本書が出版されたのは、日本にとって幸いだった。…
2015年1月7日 / 最終更新日時 : 2023年4月29日 戎崎 俊一 書評 Lost Kingdom of Africa, Gas Caesly-Hayford 西洋中心史観で覆い隠されていたアフリカの先史、古代、中世、近世の帝国とその技術、今なお残るその文化。BBC放送の単行本化したもののよう。そのせいか、参考文献がないのが寂しい。その先に行けないじゃあないか。…