同時代史 タキュトス著

西暦68年、暴君として有名なネロが自殺した。それは帝政ローマを全土を覆う泥沼の内戦の序曲でしかなかった。各地の総督がそれぞれの軍隊に担がれて、皇帝になったからである。それらは、ガルバ(ヒスパニア)、ウッテリウス(ゲルマニア)、ウェスパニアシウス(エジプト)である。軍隊では、下剋上が進行していた。将軍が権威を失って兵士のご機嫌をうかがっていた。ボーナスや利権を約束しなければ、兵士により弾劾されて将軍職を解かれ、非難され、処刑された。次に立つ者も同様の道をたどる。当然、軍隊による略奪と私的報復が横行し、市民を苦しめる。権力が次々と交代し、ネロを含めて3人の皇帝が斃れた。上から下まで私利私欲に走り、陰謀、裏切り、略奪、復讐が無意味に繰り返され、多くの市民が殺された。最終的には、ウェスパニアシウスが権力を掌握して、一応の平和が訪れる。

書籍版『科学はひとつ』のご案内

科学はひとつ 宇宙物理学者による知的挑戦の記録
戎崎俊一 著
学而図書/四六判 並製320頁/本体2,400円+税

12年にわたり執筆されてきた記事を精選し、「地震と津波防災」など全9章に再編。すべての章に著者書き下ろしの解説を加えて集成した一冊。
音楽映画評

次の記事

映画評 七人の侍