ブラックホール連星の起源と超巨大ブラックホールへの成長
多くの銀河の中心核に太陽の100万倍から10億倍の質量をもつ超巨大ブラックホール(SMBH)があることは、星とガスの運動学研究からはっきりとしてきた。一方、その形成機構は良く和分かっていない。その一つの理由は、恒星質量ブラックホールと超巨大ブラックホールとの間の質量をもつ「中間質量」ブラックホールが発見されていないことにある。X線天文衛星ASCAとChandraのスターバースト銀河M82の中心部分の観測の観測により、このミッシングリンク、中間質量ブラックホールが発見された。Subaru望遠鏡による引き続きの観測で、この中間質量ブラックホールの位置が、若いコンパクトな星団に一致していることが分かった。
これらの発見を総合して、Ebisuzaki et al. 2001は、超巨大ブラックホールの新しい形成シナリオを提案した。このシナリオにおいては、中間質量ブラックホールは、若いコンパクトな星団における大質量星の暴走的な合体で作られる。これらの中間質量ブラックホールが形成されている間に、それを含んだ星団が銀河中心核に力学摩擦で落下する。銀河中心核に近づきすぎると、星団が破壊されて中間質量ブラックホールが、放出される。このような中間質量ブラックホールが二つ集まって連星系を作り、最終的には重力波を放出して合体する。このような中間質量ブラックホールの合体を通して銀河中心核のブラックホールは成長し、ついには超巨大質量に至ると考えられる。
先に報告された重力波バーストは、36太陽質量と29太陽質量のブラックホール連星合体によるものとされている。これは、上記のシナリオの中の初期の過程によるものと考えられ、それを強くサポートするものである。
1) Ebisuzaki, T. et al. 2001, MISSING LINK FOUND? THE “RUNAWAY” PATH TO SUPERMASSIVE BLACK HOLES, Astrophysical Journal Letters, 562, L19-L22.
2) Abbott, Benjamin P.; et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration) (11 February 2016). “Properties of the binary black hole merger GW150914”. arXiv:1602.03840.