銀河中心超巨大ブラックホールの形成シナリオと地上重力波検出器によるブラックホール合体イベントの検出頻度

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Shinkai, Kanda, and Ebisuzaki (2017)は、銀河中心の超巨大ブラックホールが、中間質量ブラックホールを起点とした階層的合体で作られるというモデルを基礎において、KAGRAもしくはadvanced LIGO/VIRGOのような地上重力波アンテナで検出できるイベント数を評価した。第二世代地上検出器の感度は10Hzから上の周波数に十分な感度を持つので、原理的には2千太陽質量以下のブラックホールのリングダウン重力波を検出可能である。特に、KAGRAは天候や人工的活動による地面振動ノイズが少ない地下に設置されているので、有利なはずだ。この能力を使うと、超巨大ブラックホールが中間質量ブラックホールを起点とした一連のブラックホール合体イベントの数を確認できる。宇宙における銀河の数密度が与えられており、そのすべてが超巨大ブラックホールを持っていることを使えば、理論的にブラックホール合体イベントの発生頻度が評価できる。これと、観測数を比較すれば、超巨大ブラックホールの形成シナリオを検証できる。

検出の信号・ノイズ比の敷居を30とすると検出可能な重力波合体イベントの数は、最も楽観的な場合で年間20個に上る。地上の重力波アンテナの感度曲線を考慮すると、全質量が60太陽質量になるようなイベントが最も多く検出される計算になった。このことは、最初に検出されたイベント(GW1501912)が全質量62太陽質量であったことと整合的である。ただし、超巨大ブラックホールが、ブラックホールどうしの合体で成長したというEbisuzaki et al. 2001が提唱したシナリオに従えば、より大きな質量、例えば全質量が100-150太陽質量のイベントもかなりの頻度で存在しなければならない。特に低周波数の重力波イベントの検出努力が重要であり、超巨大ブラックホールの形成過程の解明に大きなインパクトを与え
る。

1) Shinkai, H. Kanda, N., and Ebisuzaki, T. 2017, Gravitational Waves from Merging Intermediate-mass Black Holes. II. Event Rates at Ground-based Detectors, Astrophysical Journal, 835, 276-283.

2) Ebisuzaki, T. et al. 2001, MISSING LINK FOUND? THE “RUNAWAY” PATH TO SUPERMASSIVE BLACK HOLES, Astrophysical Journal Letters, 562, L19-L22.