如何にして対人接触8割減を達成するか?
緊急事態宣言が1ヶ月程度延長されました。新規感染者の数は頭打ちになりましたが、まだ、退院者に比べて新規感染者の数の方が多く、医療機関への負担増が懸念されています。退院者が新規感染者を上回り、感染者がネットで減るようになるまでもう少しの辛抱です。
しかし、例えば6月初旬からの活動再開となった場合に向けて、そろそろ私たちも準備を始める必要があります。3月に比べて、対人接触8割減を維持しつつ、社会・経済活動をどこまで回復し、それを維持できるかが勝負です。その具体的な方策を考えましょう。これは政府の仕事ではなくて、現場に近い私たち一人一人の仕事と思います。
私なりに考察してみましたので、参考にしてください。
1.理論と目標
人と人の接触は人の密度の自乗に比例することを理解するする必要があります。そのことは、人口密度の高い大都市(東京、大阪、横浜、大阪)に、新規感染者の発生が集中しがちであることが示しています。この認識は、政府の専門家委員会が言う、三密を避けろという指示にも合致します。
この場合、職場の面積と構造、人のワークフローが与えられたとすると、新規感染イベントの発生率Iは
I=k*f*N^2
と書けます。ここでNは出勤者の数、fは保因者の割合です。kは感染効率で、職場の面積と構造、そして人のワークフローの関数です。政府から要求されているのは、この式の右辺を非常事態宣言が発出される前の2割にせよ(2020年3月末)ということだと理解しましょう。ここで、fは制御できない値なので、なんとか努力して、k*N^2を2割に下げることを目標にします。これは、
・出勤者数Nの半減
・感染効率kの7割減
で達成できます。このとき、新規感染者イベントは、0.083倍にまで抑制されます。もし、上の式のN依存性が二乗でなく単純比例だった場合でも、0.15倍への抑制となり、8割減の要求は達成できるという意味で、頑健な結論です。
それぞれをどのように実現できそうかを以下に考察します。
2.出勤者Nの半減
雇用者の半分を自宅勤務することで、出勤者数を半分にします。ただし、同じ人間をずっと自宅勤務にすると、労務管理や情報シェアに問題が出てきそうなので適切なローテーションをとる必要があると思います。その具体的方法は、それぞれの組織の事情を考慮して計画をたてて実行すればいいと思います。
私が主催している研究室では、雇用者を月水金組と火木土組に分けたいと考えています(まだ私の希望です)。前者は火木が自宅勤務日、後者は月水金のうち二日を自宅勤務日にします。自宅勤務の効率を出勤の場合の70%として、ある一人の1週間の実効仕事時間は1日を8時間として、8×3+2*8*0.7=35.2時間となり、週休二日の40時間の場合の88%となります。この際、これぐらいの仕事時間低下は仕方がないと考えます。テレコンの利用などで、この値を100%に近づける可能性は十分にあります。本来は休みのはずの土曜に出勤していただく人がいるので、本人とよく相談し合意を得た上で、人事部の承認をとって実施したいと思います。
このようにすれば出勤者の半減はそれほど無理なく達成できるし、今後事態が長期化しても研究活動をほぼ従来通りに維持可能だと私は考えます。
3.感染効率kの7割減
三密を避けろという政府の方針に従い、お互い数メートル以内に近づく機会と、物を通じての接触感染を最小限にする以下の方策をとります。
1)入構手続きの簡素化
入構手続きに手間取り渋滞が発生すると、そこで密集が発生し感染事件が起こる可能性がある。入構手続きはできるだけ簡素化し、渋滞が起こらないようにする。
2)構内のドアの開放
密閉をさけることと、ID認証パネル、ドアノブにおける接触感染の危険を低減するため、構内の建物のドアをできるだけ開放する。特に、皆が使うトイレの入り口のドアはストッパで開放にロックし、ドアノブに接触することなく出入りできるようにする(トイレの個室ドアは例外とし以下で対応する)。
3)トイレ便器、個室ドア、鍵の清掃と消毒の徹底
午前1回、午後2回の一日三回の清掃・消毒を実施する。
4)テレコンの多用
テレコンを活用して直接面会の機会を削減する。そのためのインフラ整備、セキュリティ確保も重要である。
5)空気清浄機の導入
光触媒などを使った抗ウィルス機能を持った空気清浄機を導入する。
6)マスク、手洗いの徹底
7)食堂などの座席配置の工夫
このうち、6),7)はすでに4月初旬の時点で多くの組織で実施されていました。長期的には、5)が重要かもしれません。
4.通勤時の対策
別途、通勤時の感染対策をとる必要があります。上記の対策を採ったとき、より危険なのは、三密が避けられないラッシュアワーの公共交通機関内となるからです。そこで、
1)ラッシュアワー(朝7時30分から9時、夕方17時30分から18時30分)を避けて通勤できるよう、-2時間、+2時間のフレックス勤務を推奨する。
2)公共交通機関を使わない通勤手段(徒歩、自転車、車)を奨励する
などの対策をとるべきだと思います。
別途、交通機関(鉄道、バス、飛行機)は、抗ウィルス機能を持った空気清浄機の早期導入を検討していただきたいです。もちろん、駅のトイレの清掃も重要です。電車から降りたときにまずはトイレに行って手と顔を洗いたいと考えるのが人情ですが、そこが汚染されていたら目も当てられません。
最後に長時間の三密状態が強いられる国際便の飛行機については、早期診断キットによる診断を全搭乗者について実施して、保因者を機内に入れない工夫が必要です。