提言:国家戦略の転換: A Proposal for new national strategy

TPP参加の議論が本格化し、日本の農業を見直す機会がやってきた。また、太陽活動サイクル24はことのほか太陽活動が不活発で、黒点がほとんど表れない太陽活動極小期に次のサイクルから突入する可能性が指摘されている。21世紀第二四半世紀(2025-2050年)から、15-18世紀のような小氷河期となり気候の寒冷化が進行する可能性がある。その時は、東北・北海道ではコメが不作となるに違いない。世界人口のピークは2030年から2050年とされており、この時期に予想される世界的食糧危機の克服が国家的な課題となる。この間、国民を飢えさせないで国益を守る社会体制の構築を急ぐ必要がある。以下の政策を提言する。多くの人の議論を望みたい。

1)3年分の食糧国家備蓄
日本における過去の飢饉の記録を見ると、天候の悪い年の継続は2年程度にとどまるようだ。その間国民が食いつなげるために2年の食糧備蓄が必須である。このとき、朝鮮半島北部から中国東北地方はより悲惨な状況が想定される。これらの地域の住民の難民化もしくは暴徒化を防ぐための食糧援助にもう一年分用意する。エネルギー的に低コストでの備蓄を可能にするために、北海道の東北の凍土地帯に、ヒートパイプを利用した冷凍庫を設置する[1]。備蓄後、食用に不向きと判断される部分は燃料生産に振り向ける。

2)人口抑制と教育への投資
国内の食料で何とかやっていける1億人前後まで人口を減らす。それでも国が立ち行くように、教育を社会インフラとして充実する。使える人間の歩留まりを上げなければならない。

3)新班田収授の制度
希望者に耕地を支給し、将来の年金を減額する。企業で肩たたきが始まり、まだ体が動く40代後半から準備を始め、その地方に溶け込めるようにする。2人家族がなんとか食べてゆける10アールほどを、年金を減額することを条件に、一代に限り自由に使える制度を作る。班田の支給には、休耕地を有効利用する。食糧不足になった時には、この耕地で何とか最低限のエネルギーは確保できるようにする。自家消費を原則とする小規模家族経営の農家の方が、市場をターゲットする大規模農家よりも、人を養うという観点からは効率が良いことが分かっている(金を稼ぐのには向いていないが)。要は、国民全員が第二種兼業農家になるということであり、ロシアのダーチャのようなものと考えればよい。

4)地下灌漑システムの普及
TPP対策に合わせて地下灌漑システムの普及を急ぐ[2]。これで、田畑変換が自由にできるようになり、米・麦の二毛作、米、小麦、サツマイモ、大麦、大豆などを組み合わせた輪作系が、水田で比較的簡単に組めるようになる。東北地方以北では、サツマイモがジャガイモに代わるかもしれないし、粗放栽培が容易なカボチャも有望である。食用だけでなく、アルコール燃料(サツマイモ、ジャガイモ)、牛の飼料(米、麦、大豆)などに利用する。焼酎カス、牛の糞は堆肥にして農地に返す。燃料用は3年間の備蓄のちに燃料化し、万が一の場合は食糧として放出する。

5)農地における太陽光利用エネルギー施設稼働の許可
農地に設置した太陽電池施設や太陽光利用装置で売電、燃料生産を可能とする。原発稼働の制限による電力不足の解消につながる。現在は農地法で禁止されているので、法改正もしくは特例などの必要な処置をとる[3]。農地法の運用は、地方自治体に任されているので、運用方針の転換で法改正なしでも可能となるかもしれない。班田収授対象者で農業に自信がない世帯は、エネルギー施設運用で生計を立ててもらう。

[1]帯広市八千代地域におけるヒートパイプを利用した大型実用低温貯蔵庫の開発、土谷富士夫、北海道 自然エネルギー研究(6): 15-22, 2009
[2]自分でできる「地下かんがい法」(青森・福士武造さん)、現代農業2008年11月pp108-119.
[3]太陽光発電で農地荒廃を防ぐ、浅川初男、現代農業2008年1月号、pp266-271