種分化が完成する前の種
ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチの適応放散は、種の分化を調べるのに適している。彼らは、2-3百万年前に最初に植民した一つの種から分岐し、現在は14種がガラパゴス諸島に生活している。Grant and Grant (2006)は、ガラパゴス諸島の大ダフネ島のフィンチ類の進化を調査している。そこで彼らは、種分化の異所的時期において、自然選択と食物獲得ニッチへの適応の役割の重要性が繰り返し確認された。また、種分化の同所的時期において、歌と形態の違いが、遺伝子交換に対する前交尾的障害になっていることを見出した。この形態による生殖隔離の原因の一部は、食物への適応によるくちばしの変化である。一方、歌の特徴の変化は、異所的にくちばしの形とはほとんど関係なく進んでいる。その理由はまだ完全には理解されていない。遺伝子交換障害が完全には有効ではないにもかかわらず、種間雑種は少ない。ある条件においては、雑種が驚くほど環境に適応することも見出された。
大ダフネ島の地上フィンチ種であるGeospiza scandens GouldとG.fortis Gouldは、雑種化が進んでその形態上の差異が無くなって、合体してしまった。ただし、父親から子に刷り込みで受け継がれる歌の差異は残っている。これらは気象条件の変化により再び分化するかもしれない。このような合体・分岐を含めた複雑なダイナミクスは、比較的若い種において、その雑種域で比較的頻繁に起こるのかもしれない。
Grant, P.R. and Grant, B.R. 2006,Ann. Missouri Bot. Gard. 93, 94-102.