ホウ酸鉱物とRNAワールドの起源: Borate minerals and origin of RNA world

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RNAワールドは前生物的(>3.7Ga)化学と現代のDNA/タンパク質生化学の間を埋める重要な鍵である。RNAワールド仮説が成り立つためには、それに先立ってRNAを構成するリボースが他の糖に対して際立って安定になる環境が整えられる必要があった。ホウ酸溶液の中で、リボースが特に安定になる事実が発見され(Bener 2004)、これがこの問題に対する解決と考えらるようになった。残る問題は、RNAの合成が進む原初地球において、十分な量のホウ素が存在していたかということになる。

ホウ素は典型的な地殻元素であり、上部大陸地殻に存在密度が高い(Grew et al.2011)。すなわち、上部地殻において平均17 ppmに対して、下部近くで2 ppm、原初マントルで0.26ppmの濃度である。さらに、ホウ素は、地殻岩石の中に不均等に分布している。例えば、花崗岩には40 ppm、海洋堆積物で180 ppmそして、変質海洋地殻で270 ppmに達する。

グリーンランドのイスア複合体(変性年代が3650-3600Ma)から、変性トルマリン(苦土電気石(dravite)と黒トルマリン(schorl))が発見されているのがホウ素鉱物のもっとも古い例である。トルマリンのコアは、もともとはこれらが岩屑であったことを示しており、その岩屑の形成年代はさらに古い可能性がある。

Harrison (2009)は、4300Maの地球は、現在の地球とよく似ていたと結論している。つまり、浅いとはいえプレートの沈み込みが主要な役割を果たし、水が全球的な海に凝集していた。その場合は、ホウ素循環は現在の地球のそれと似ているはずである。Ushikuboi et al. (2008)は、冥王代ジルコンの高いLi濃度とδ7Li値は、4300Maにおける化学分化と地殻の風化の存在を示している。もし、大陸地殻のLi濃度が高いならばホウ素も同様に高かったと考えられる。したがって、冥王代においても、新生代や完新世と同様に、ホウ酸が蒸発岩として析出していた可能性が高い。

一方、Shaw and Middletown (1972) アポロ月探査で持ち帰られた月の高地のKREEPに富む玄武岩のホウ素濃度を調べ10-20 ppmと地球の現在の地殻岩石と同程度に高いことを見出した。これらと同種の岩石は、冥王代地球にも存在したはずである。したがって、大陸地殻が存在し、その内部で乾燥気候が発達すれば、蒸発岩としてホウ酸鉱物が大量に形成される可能性が高い。

Benner, S.A., 2004, Understanding nucleic acid using synthetic chemistry, Acc. Chem. res., 37, 784-797.

Grew E.S. et al. 2011, Borate Minerals and origin of the RNA World, Orig. Life Evol. Biosph., 41, 307-316.

Harrison, T.M. 2009, The Hadean crust: evidence from >4Ga zirons. Ann. Rev. Earth Planet Sci. 37, 479-505.

Ushikubo, T. et al. 2008, Lithium in Jack Hills zircons: Evidence for extensive weathering of Earth’s earliest crust, Earth Planet Sci. Lett., 272, 666-676.

Shaw, D.M. and Middletone T.A. 1987, LPI, 18, 912.