エチオピアのキビッシュ層群の層序学と年代:stratigraphy and age of the Kibish formation Ethipia

ファイル 147-1.jpgファイル 147-2.jpgファイル 147-3.jpg

エチオピアのキビッシュ層群の部層Iから出土したOmo IとOmo IIの人類化石は初期のホモ・サピエンスと考えられておりその年代は196kaと推定されている。部層Iのナカアキレタフの直接年代は196±2 kaであり、部層IIIにあるアリヨタフの年代は104±1 kaである。これらが上限と下限を与える。実際の化石年代は同じ部層の下にあるナカアキレタフに近い年代を持つと考えられてきた。両者の間にあるKHSタフの年代を推定することが、この化石の年代の下限を押し上げるために重要である。

これまで、キビッシュ層群の部層IIの中にあるKHSタフはこの場所で直接は年代付けされていなかった。しかし、地中海の腐泥層S6の形成に近い時期に堆積したと信じられてきた。また、電子顕微鏡解析から、KHSタフが、ヘルト、ゴナ、そしてコンソのWVAT(Waidedo Vitric Tuff)、およびエチオピア地溝帯のクルクレッティのユニットDと関係していると示唆された(Brown et al. 2012)。コンソのTA-55試料は154kaより古くクルクレッティのユニットDは183kaと時代づけされている。これらの形成と年代は、Omo IとOmo IIについて最初に推定された年代と地中海腐泥層の形成とキビッシュ層の体積との関連を強く支持する。キビッシュ層群の部層IIのアリヨタフは104 kaと時代付けされ、ガデモッタのユニット15と関係づけられた。

二つのOmo IとOmo IIの人類化石の年代決定は、それらが出土した地層の同定に依存する。Butzer (1969)は、それらをキビッシュ層群の部層Iに置いた。詳しい検討の結果、同じ結論をBrown et al. 2012は得た。その化石が出土したトレンチは、部層Iにあり、その他の層群から得られた可能性はない。KHSタフは部層IIの底近くにあり、出土場所にも存在している。Omo IIの出土場所は、地質学的に違った場所からの出土とされていたが、発見時の写真には、尾根筋に現在も存在するAdenim obesumの位置と残土の位置から実際の出土場所は間違えようがない(図1)。Butzer (1969)は、出土断面の少し上にあるタフ層を部層IIの底にあるタフに帰属させ、化石が部層Iの上部から出土したとした。この彼の帰属づけは正しく、このタフが、KHSタフとして知られるようになった(図2参照)。

キビッシュ層群は、ツルカナ湖が湖水面が現在よりも80-90m高かった時に、その北の端にオモ川から運ばれた土砂が堆積したものである。この事実と、タフ同士の関係性から、以下のことが推定できる。KHSタフの年代は、TA-55の上にあるシルバータフ(TA-54)の年代より古い(>154±7ka)ことがわかる。キビッシュに河川とデルタ平原堆積物をもたらすためには、湖水の水準が高い必要があること、湖水が高い時期はモンスーンの強さに関係する腐泥層の堆積と関係すること、その下にあるナカアキレタフの年代が196kaであることから、KHSタフの噴火と堆積時期は、腐泥層S6の堆積時期(172kaと推定されている;Lourens et al. 1996)であると結論できる。

この時期は、数千年にわたって北緯65度日射量が405 W m^-2を超える温暖期で、モンスーンが活発で東アフリカ北部の降水量も多かったと考えらる。このため、ツルカナ湖の湖水面が高く、ナイル川からの流量も豊富だったはずである。前者がキビッシュ層群を後者が地中海腐泥層を作った。ちなみに、地球軌道の計算から得られる北緯65度日射量が405 W m^-2を超える時期と地中海腐泥層の堆積年代はよく相関している(図3)。つまり、S1層:6-12ka、S2層:52-58ka、S3層:79-83ka、S4層:99-106ka、S5層:120-130ka、S6層:168-178ka、そしてS7層:192-199kaである。このうちS4層(104ka)がキビッシュ層群の部層IIIに、S5層(124ka)が部層IIb、S6(172ka)が部層IIaに対応付けできる(McDougall et al. 2005)。これらの対応付けは、キビッシュ層群にTA-54(154ka)に対応する部層がないことと整合的である。この時期は、対応する腐泥層がなく、モンスーンが弱くツルカナ湖の水準は低かった可能性が高いからである。

Brown, F. H. et al. 2012, Correlation of the KHS tuff of the Kibish Formation to volcanic ash layers at other sites, and the age of early Homo sapience (Omo I and OmoII)

Butzer, K.W. 1969, Geological interpretation of two Pleistocene hominid sites in the lower Omo basen, Nature, 222, 1133-1135.

Lourens, L.J. et al 1996, Evaluation of the Plio-Pleistocene
astronomical time scale, Paleoceanography, 11, 391-413.

McDougall, I. et al. 2008, Sapropels and the age of hominins Omo I and II, Kibish Ethioiopia, J. Hum. Evol., 54, 409-420.

Calvert, S.E. and Fontugne, M.R. 2001, On the late Pleistocene-Holecene sapropel record of climatic and oceanographic variability in the eastern Mediteranean. Paleoceanography, 16, 78-94.