キビシュ人類化石出土サイトの微小層序:Microstratigraphy of the Kibish homin sites
人類化石Omo IとOmo IIの出土場所の調査は2002年の1月と2月に行われた。Omo Iの出土場所では、徹底的な発掘が行われた(Feibel 2008)。残された化石と石器の採集と同時に出土場所の微小層序の調査がその主な目的である。キビシュ層群はさまざまな階層の浸食を示している。最も大きな不整合は、キビシュ層群の基底にあるもので、ツルカナ湖の湖水レベルの低下によるオモ層群の堆積停止とツルカナ層の堆積の間の、10-100kyrにわたる浸食を示している。次に大きな不整合は、1-10kyrの浸食を示しており、単に不整合と呼ぶ。もっとも小さな不整合は、1-100年程度の変化を表していて、小さい不整合と呼ぶ。
Omo Iが出土したKamoya’s Hominoid Site (KHS)は南向きの浸食されつつある斜面に広がっている。部層IIの最も低いタフであるKHSタフは、この場所の東の端に露出している。その下7mほどの断面が南西に向かって露出しており、タフの上には数メートルのシルト層がある。現場の断面は、部層Iに属する約6mシルトと粘土の層である。これらは、部層IIの底面の不整合の下にある。部層Iは基本的には平坦だが、HKSタフは西に向かって5度傾斜している。
Butzer(1969)は、部層Iの中に6つのユニットをaからfと名付けて記載している。KHSの現場においては、4つの浸食面があり1-4の番号で図3に表わされている。面2は小さな浸食面で、Butzerのユニットdとeの間にあたり、人類化石が保存されていた。面1はd/e面にある。地形に従って最大10cm浸食を受けている。もう一つの浸食面はd/e面の上にあり、2-3cmの起伏を持っている。表面は薄い波打った砂の層でおおわれている。一番上の浸食面(面4)は、部層IIの最下層である貝虫を含んだ粘土層の基底に位置している。この面はより大きな浸食面で、湖水の前進(貝虫化石が示す)に先立つ部層Iの浸食に対応している。2002年の発掘では、面1と2の間のシルト層からカバの足跡を発見した。また、波紋や斜交層理など小さなスケールの堆積構造が部層Iの上半分によく見られた。
Omo IIが出土したPaul’s Hominoid Site (PHS)において、人類化石は南北に走る尾根の西の斜面の基底の露頭から出土した。この下の露頭から、哺乳類と魚の骨の破片が見つかっている。現場の10mの断面は部層Iの約3.5mの砂、シルト、そして粘土層と、6.5mの部層IIの基底の不整合面の上の同様の地層からなっている。PHSにおいては、顕著な浸食面(面4)が一つ認識された。KHSで見られた他の浸食面は岩相学的な面に反映されているかもしれない。
これらの研究から、キビッシュ層群、部層I上部の堆積史を再現することが可能である。部層Iは、浸食谷における堆積、湖水の前進による水没、それに続くデルタにおける堆積、そして断続的なデルタ平原としての陸上への露出のパターンを示している。その後、二回目の浸食期とその後の湖水前身による部層IIの堆積が起こった。
部層I上部の情報から、Omo IとOmo IIの人類化石資料が堆積したときの状況が推定できる。粒子のサイズ(シルトと細かい砂)と基本的堆積構造(さざ波斜交節理など)、そして上に向かって粒子サイズが荒くなる層序は、デルタ平原での堆積であることを示している。また、堆積速度がかなり早かったことがわかる。このため、Omo IとOmo IIの人骨がよく保存したものと考えられる。
Klein(1999)のKHSとPHSの人類化石が部層Iに流れ込んできたものではないかという指摘を否定することはできないが、それを支持する証拠は全くない。動物の化石が部層Iの上部から集中して出土する事実は、人類化石が移動していないことを示している。また、デルタ平原においては大規模な移動は考えにくい。その後の部層IIの堆積の後は、移動はほとんど不可能である。今のところ、すべての証
拠はOmo IもOmo IIも部層Iの最上部で堆積したものだという考えを支持している。
Feibel C.S. 2008, Microstratigraphy of Kibish homin sites KHS and PHS Lower Omo valley, Ethiopia, Journal of Humen Evolution, 55, 404-408.
Butzer, K.W. 1969, Early Homo sapience remains from the Omo river region of south-west Ethiopia: geological interpretation of two Pleistocene hominid sites in the lower Omo Basin, Nature, 222, 1138-1140.
Klein, R.G. 1999, The human Career, second ed. University of Chicago Press, Chicago.