新規遺伝子の出現に関する「出精巣」仮説: The “out of testis” hypothesis for the emergence of new genes
新規遺伝子の出現に関する「出精巣」仮説(Kessmann 2010)は、新しい遺伝子や遺伝子構造の転写は、精巣の生殖細胞、減数分裂をする精母細胞と減数分裂後の精細胞で促進されると考える。一度、転写されると、新規の有効な機能をもつ遺伝子は選択的に保存され、より効率的なものへと進化する。最終的には、このような新規の遺伝子はより広い発現パターンを持つ、すなわち精巣以外の組織でも機能を獲得する。
精母細胞と精細胞は、精子形成が進む輸精細管の中に見られる。これらの細胞の中では、クロマチン構造が全体に緩んでいるためと、転写機構が強く発現しているために、新規遺伝子の転写が促進される。転写的に活発なクロマチン状態は、CpGリッチプロモータ配列の広範な脱メチル化とヒストン修飾(アセチル化とメチル化)の結果と考えられている。これらは転写機構のアクセスを促進する。
Kessmann, H. 2010, Origins, evolution, and phenotype impact of new
genes, Genome Research, 20, 1313-1326.