カロテノイド合成経路におけるリコペンシクラーゼの進化: Evolution of Licopene cyclase in the carotenoid synthesis pathway

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微生物のロドプシンは、膜貫通型のαヘリックスを7つもつオプシンと光感受性のある補因子レチナールの共有結合により作られている。古細菌において、ロドプシンは光で能動駆動されるイオン輸送機構および走行性のセンサーとして働いている。好塩古細菌の一種であるHalobacterium salinarumは、一連のイソプレノイド重合反応で作られるゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を二つ結合してファイトエンとし、さらに不飽和化反応でリコペンを得る。リコペンの両端を環化してβ-カロテンとなり、それを二分してレチナールを得る(図1)。Peck et al 2002は、古細菌類Halobacterium salinarumでは、リコペンからβ-カロテンへの反応を進める触媒リコペンシクラーゼを、crtYと名付けられた遺伝子が司っていることを明らかにした。また、細菌および菌類の対応する遺伝子があることが分かった。

細菌は対応する遺伝子を二つ(crtYcとcrtYd)を持っている。それらはそれぞれ3つの膜貫通部位を持っている。一方、古細菌のリコペンシクラーゼ(crtY)は、細菌の二つのシクラーゼに対応する部位があり、それをつなぐもう一つの膜貫通部位を加え、7つの膜貫通部位を持つ(図2)。菌類のリコペンシクラーゼ(crtYb)はさらに、古細菌のリコペンシクラーゼにファイトエン合成酵素が結合している。

これらを総合すると、以下のような進化シナリオが考えられる。まず、細菌において、ホモ二量体リコペンシクラーゼの遺伝子重複で、二つの別のリコペンシクラーゼが作られた(crtYcとcrtYd)。次に、それらが一つに融合して、古細菌のリコペンシクラーゼ(crtY)が作られた。さらにこれにファイトエン合成酵素が融合して菌類のリコペンシクラーゼ(crtYb)が作られた。

Peck, R.F, et al. 2002, Identificqtion of a Lycopene β-Cyclase Requiered for Bacteriorhodopsin Biogenesis in the Archaeon Halobacterium salinarum, Journal of Bacteriology, 184, 2889-2897.