Collapse: How Societies Choose to Fail or Succeed

Collapse: How Societies Choose to Fail or Succeed: Revised Edition
Jared Diamond 2011年 Penguin Books
 著者が生まれた米国モンタナ州から議論を始め、イースター島、ピトケアン島、ヘンダーソン島、グリーンランドのバイキング入植地、メキシコ・チャコ渓谷、マヤなどの、社会が崩壊してしまった例を調べ、その経緯と原因を明らかにした。一方で、ハイチ、日本などの孤立しながらも危機を脱した社会の例を挙げて、違いが何かを探っている。著者は、社会の存続に重要な因子として、気候変動、敵対する近隣者、不可欠な交易相手の消滅、そして上記4つの問題に対する社会の反応の5つをあげている。
 さらに、これを現在の我々の地球サイズに広がった文明の状況に照らし、以下の12の問題点を指摘している。
1) 森林破壊
2) 土壌破壊(浸食、塩類集積、地力劣化など)
3) 水質管理
4) 乱獲(陸上生物)
5) 乱獲(水生生物)
6) 外国種の導入による固有種エコシステムへの影響
7) 人口過多
8) 一人が使う資源の増大
9) 人工効果による気候変動
10) 環境への毒の蓄積
11) エネルギー不足
12) 人類がほとんどの光合成生産物を独占する
まず、地球全体が一つの経済圏に包まれようとしている今、交易により必要資源をその外から手に入れることができなくなっている。つまり、実質的に独立な交易相手がいなくなってしまった。つまり不安定要因が増大している。すべては、この地球上で処理しなければならない。また、過去の社会が崩壊してしまった例を見ると、常に森林破壊がその前兆として起こっている。現在、全球的に進行中の森林破壊は危険なシグナルである。
 その認識の元に上記の12個の因子を私なりに評価してみると、7番目にあげられた「人口過多」が根本原因で、残りの因子の大部分は、それから導かれる二次的な要因であることがわかる。要するに増え続ける人口で増大する食糧需要に対応するために、1,2,3,4,5,6, 10が進行中なのだ。
 先進国として唯一森林破壊が17世紀以降進行していない国として著者に止揚されている日本で、徳川政権によるトップダウン政策として森林が保護され、ボトムアップ手段として樹木を大事にする日本人の固有の文化と宗教が働いたことは重要であった。一方で、それを実現するための負の部分として、嬰児の間引きや老親の姨捨などによる人口抑制があったことに、著者は気づいていないようだ。
 著者が述べているように、農業に立脚している社会の場合、一人あたりの平均耕地が10アールを切ると、過半の生活が不可能になり、激しい虐殺や内戦が起こって人口が減少し、その結果なんとなく社会が落ち着く(ルワンダの場合)か、もしくは、その後も内戦が続いてほとんど人口がなくなるまで殺し合い、社会が完全に崩壊する(イースター島やチャコ渓谷などの場合)。
 虐殺や戦争を避けるためには、なんとかして世界人口を平和的に、モラルに反しないで抑制しつつ、緩やかな経済成長を持続しなければならない。12個もある因子に惑わされてはいけない。問題は一つだ。ただし、その解決は、生物としての本能に逆らわなければならないだけに、大変難しい。