自粛ばかりが能ではない 「3密」でのコロナ不活性化装置開発急げ 紫外線LED、光触媒…アイデアいろいろ

 5月25日に緊急事態宣言が解除された。日本は密閉・密集・密接の「3密」がそろうところで感染が起こりやすいとして、それを避けることに注力し、新型コロナウイルス(COVID=コビット-19)の感染拡大抑止を医療崩壊に陥ることなく成し遂げた。反省すべき点はたくさんあるが、比較的軽傷で第1波の感染爆発を食い止めたことは素晴らしい。安倍晋三首相をはじめとした政府関係者、地方自治体担当者、医療従事者の方々の努力に敬意を表したい。
 今後の経済活動を再開するフェーズでは、第2波、第3波の感染爆発が発生するだろうし、次の冬にはインフルエンザとともに流行が再開すると思われる。いつまでも3密を避けるだけではうんざりする。問題は主に3密であることがはっきりしたので、それを無害化する対策を立てればよい。3密空間のウイルスを不活性化する装置の製品開発を早急に進めよう。
  まず、長期間の3密を強いられる国際線フライトでは、搭乗直前に搭乗者全員の保因子検査を実施する。30分以内で結果が出る検査技術は既に確立されているし、それで搭乗者全員の検査を行っている航空会社もある。世界的な感染拡大を防ぎつつ、経済活動を維持するために、早急に実施すべきだ。検査キットの量産体制と搭乗ゲートにおける検査体制の確立を急ぐ必要がある。
 次に、3密空間の照明を、紫外線を含んだもの(紫外線カクテル電球と仮に呼んでおく)に切り替える。ウイルスは数分の直射日光照射で大部分が不活性化することが報告されている。太陽光に微量に含まれる紫外線がその原因だ。
 LED(発光ダイオード)電球の中に紫外線LEDを交ぜることにより容易に紫外線カクテル電球を作ることができる。野外の拡散太陽光の数分の1の紫外線強度に抑えれば、大部分の人間への悪影響は最小限にとどまるだろう。
 紫外線に敏感な体質の人は、サングラスの装着や日焼け止めの塗布などが必要かもしれない。人体の接近を検知するセンサーと連動すれば、人が近くにいるときは紫外線レベルを弱めに抑え、遠ざかったら自動的に紫外線強度を上げて、消毒モードに切り替わるような知的な制御も可能だろう。
 電車内や飛行機(国内線も含む)内、病院や役所、公衆トイレ、レストランや居酒屋、スポーツジムなど3密が発生する可能性がある場所には早急に紫外線カクテル電球を設置してほしい。
 その他、アイデアはいくらでも出てくる。光触媒の原理を考えるとウイルスの不活性化機能を期待できる。光触媒を用いた空気清浄機や便器、塗料などは有望だと思う。これらの製品を大急ぎで開発(既に開発済みのものもある)し、ウイルスへの不活性化効果を確認の上、今冬の再流行に間に合わせていただきたい。政府や地方自治体もそのような製品の購入や普及に努力してほしい。研究所や試験機関も、製品の有効性や使い方についての公正な試験結果を発表することで貢献できるはずだ。
 このようにして日本の全ての空間が、世界のどこよりも安全だと世界の人々が確信すれば、2021年の東京五輪正常開催が視野に入ってくる。自粛ばかりが能ではない。そろそろ働くときだ。進め、日本人。

2020年6月4日 フジサンケイビジネスアイ 許可を得て転載

書評

前の記事

Japan’s Secret War
科学論

次の記事

「複雑な系」への挑戦