単燐酸を還元して、亜燐酸を作る: Reduction of Phosphate to produce phosphorus acid

Glick (1955)は、太古地球における水溶性の燐酸化合物の生成として、単燐酸の還元を提案した。Glindemann et al (1999)は、水で飽和したメタンと窒素混合ガス中の放電させると、燐酸カルシウム(カルシウム単燐酸)を還元して、亜燐酸塩を生成することを見出した。さらに de Graaf and Schwartz (2000)はさらに、CO2(60%)+N2(40%)混合ガスにH2+CO2を混ぜて、燐酸カルシウムを放電に晒す実験を行い、H2+CO2が18%の場合には、亜燐酸の収率が、25%に達することを明らかにした。さらに彼らは、「酸化・還元中性」の大気(60%CO2+40%N2のみ)の中で燐酸ナトリウムを放電に晒すと、二燐酸と三燐酸が合成されることを示した。

冥王代の地球大気は、どちらかというと酸化的なだったという考え方が現在支配的である。しかし、蛇紋岩化反応による水素発生場などでは局所的に還元的な環境が実現していた。そういう場所には、ウラン、トリウムなどの放射性元素も濃集する可能性があり、電離放射線が放電の代わりを果たしていたかもしれない。

Glick, A. 1955, Phosphorous as factor in the orgin of life, Am. Scientist, 43, 479-489.

Glindemann, D. et al. 1999, Chemical reduction of phosphate on the primitive Earth, Orgins Life, Evol. Biosphere, 29, 555-561.

De Graaf, R.M. and Schwartz, A.W., 2000, Orgins Life, Evol. Biosphere, 30, 405, 410.