星雲の冬

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図9 超新星残骸や暗黒星雲などの星雲との遭遇は、負の放射強制力による寒冷化、宇宙線フラックス増加によるオゾン層破壊を通して、地球の表層環境の破局をもたらす。

図10 「星雲の冬」モデルは後期原生代(エディアカラ期を含む)からカンブリア期に起こった全球凍結、大絶滅の繰り返し、そして生物多様性の爆発的増加をうまく説明する。

超新星残骸や暗黒星雲などの星雲との遭遇は、負の放射強制力による寒冷化、宇宙線フラックス増加によるオゾン層破壊を通して、地球の表層環境の破局をもたらす(図9)。その結果の基礎生産量の減少が、酸素濃度の減少と食糧の不足、そして海洋無酸素事変を通して大絶滅を引き起こす。この「星雲の冬」モデルは、超新星残骸遭遇による千年から1万年の変動、暗黒星雲遭遇による10万年から1千万年の変動、そして銀河全体のスターバーストによる1億年スケールの階層的な変動を予言している。

この「星雲の冬」モデルは後期原生代(エディアカラ期を含む)からカンブリア期に起こった全球凍結、大絶滅の繰り返し、そして生物多様性の爆発的増加をうまく説明する。後期原生代の全球凍結事件は770百万年前からカンブリア期まで、約200百万年続き、その間二回の超氷期(スチューリアン氷期とマリノアン氷期)が起き、さらには少なくとも八回の大絶滅が発生している(右図a)。それは石灰岩の、強いδ13Cの負異常と同期しており、この時期に地球の炭素循環、おそらく光合成による基礎生産量の激変があったことを意味している(右図b)。

このような環境変化は「星雲の冬理論」で以下のように説明することが可能である(Kataoka et al.2013)。天の川銀河は約60億年前にスターバースト状態にあった。その結果として地球が何度も全球凍結した。それが終わり、正常な状態への過度期には、スターバーストで誕生した多くの星が死期を迎え、特に多くの超新星が爆発したと考えられる(右図e)。したがって、超新星残骸との遭遇が顕生代に比べて一桁高い頻度で起来たと考えられる。その一つ一つの超新星残骸との遭遇が、局所的な(全球凍結に至らない)氷期の原因となる。この時、地球の表層環境が寒冷化して破局し、大規模な生物大絶滅が起こったのだろう。実際これらは、化石にみられる大絶滅、つまりアクリターク、エディアカラ動物群、微小殻化石群、そして古杯類の絶滅時期と対応付けられる(右図c)。

また、これらのδ13Cの負異常期の年代が、動物種の系統樹における主要な分岐年代とも一致している(右図d)。超新星残骸の強い宇宙線が生物のゲノム不安定を引き起こして、その進化を加速したかもしれない。

Kataoka et al. 2014, The nebula winter: the united view of the snowball Earth, mass extinctions, and explosive evolution in the late Neoproterozoic and Cambrian periods, Gondwana Research, 25, 1153-1163