The Coldest Winter: America and the Korean War

The Coldest Winter: America and the Korean War
David Halberstam
Hachette Books 2007
朝鮮戦争従軍者への徹底的なインタビューにより明らかになった朝鮮戦争の実態の詳細な記述。マッカーサーと連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ)が太平洋戦争と日本占領の成功体験にあぐらをかいて慢心し、スターリン・ロシアの援助を受けて北朝鮮を掌握した金日成の野望を軽視していた。金日成軍の奇襲に直面し、十分な準備と訓練・装備を持たずに戦争に突入した米軍を中心とした国連軍は、惨めな敗走を喫した。仁川上陸作戦で盛り返して鴨緑江近辺まで到達したものの、毛沢東・中国共産党(蒋介石率いる中国国民党を大陸から掃討しつつあった)の参戦を読めずに、再び38度線まで押し戻された。現場将兵に不必要な犠牲を強い、アコーディオン戦争とも揶揄されるようなドタバタ戦争を演じた。
日本では、日露戦争後、中国東北部に展開した関東軍が暴走し、泥沼の日中戦争を継続し、国際的な孤立を招いたことが強く批判されている。同様に、マッカーサーが太平洋先生と占領下日本の統治の実績でカリスマ化し、ルーズベルト大統領の死によって副大統領から昇格したトルーマン大統領を超える権威を背景に無謀な進撃を将兵に強い、犠牲を無駄に拡大した。このマッカーサー最高司令官の慢心と自己陶酔を、「犯罪的」と言う言葉をまで使い厳しく批判している。このアジア人に対する米国イスタブリッシュメントの軽視と偏見は抜きがたく、ベトナム戦争でほぼ同種の失敗を演じている。
1940年頃から25年間は地球が一時的に寒冷化した時期だった。国連軍将兵は、ほとんど夏服しかない装備不足だった。韓半島北部の山岳地帯の極寒の気候の元で泥沼の戦闘を行った彼らの証言から、この本のタイトルが生まれた。
ワシントンDCのナショナルモールの中に、朝鮮戦争戦没者慰霊碑がある。そこには設置された18名の米軍兵士の像の疲れて怯えた表情は、米国がこの戦争で味わった苦さを示している。